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●山崎淑子さんインタビュー(19)
 ●山崎淑子さんインタビュー(19) 

 「どこにでも良い人はいる」 サラさんは、ある刑務官について語り始める。 

 そのアメリカの刑務官はこう言ったという。

 
 「俺らは、何十年も何千人という本当のワルを見ているから分かるけど、あなたがその顔をして、『オペラ歌え』と言えばオペラを歌って、それでニコニコして『私は本当に無罪です』と言っても、我々は言われなくても信じているよ。

 無罪だと信じているから、とにかく何でもいいから生きて出ることを考えなさい。生きて出たらいくらでも本を書けるでしょ。いくらでも後で国家賠償できるでしょ。

 とにかく無罪だと分かっているから(ここでは)できるだけ楽しく安全にすごして、生きて出なさい」ってことで、彼らが目を光らせてくれたので・・・本当に暴力的な人や危険な人とか精神障害者が多いんですけど、(■アメリカの刑務所ですか?)・・・そう。でもアメリカの刑務所で私がわざと呼ばれて、そういう刑務官が集まる所で、オペラの簡単なコンサートを開いて?アリアを歌ったり、逆に私に『歌を聞かせてほしい』って外から独房とかグループ房の中に来て、オペラをリクエストして、歌ったら<お駄賃>にソーダを呉れたり・・・わざと見せつけることで『この人には手を出すなよ!』っていうのを見せているので、危険な人もね、最初は確かに暴力も振るわれたんですけど、誰も触れなくなったので・・・そういうのは感謝してますね。(■う~ん)

 日本の拘置所でも、辛いことばかりでしたけども、ひとつ良いことは、あの検閲するために・・・私がアチコチに一生懸命紙と鉛筆を手にして以来は、あの一生懸命手紙を書く中で・・・

 ■岩上: あの、サラさんのお付き合いある人は非常にエリートの人も居た。そういうような人たちに手紙を書いたわけですね。そのお付合いがあるだけでビックリしますよね。

 ●サラ: うん・・で、そのお付き合いの中には政治家も居たし、南野(*南野 知恵子・のおの ちえこ)法務大臣も居たし、面識のある与謝野馨さんも居たので、そいう人たちに『弁護士さんに頼んでも、私選は雇ってくれないし、弁護士に声明文を託したのにそれもお金だけ取って配布してくれないし・・・どうしようもないまま送られたら冤罪被害者になるし、死んでも死に切れないので、無罪をあなたに訴えますから聞いてください。何とかしてください』という手紙を・・最後もう送られると決まってから一ヶ月近くあったんですね。

 9月26日に「主文:引き渡されるケースとする」と言って・・・控訴頼んだんですけど、この制度には控訴はないとか・・・っていうのも教えてもらえず、控訴がなかったので、後の一ヶ月はもう絶望的な思いで只ひたすら、一日に一通しか手紙は出せないので、一日一通を引き渡されるまでのあいだ、親に送ったり、友人に送ったりする中で、只さようなら、だけじゃなく「私は無実です。これは拉致です」みたいなのをね書いたら、それを毎日、拘置所のかなり上の幹部の方-刑務官の幹部の方-が検閲係で読まれるわけです。

 それを読んで・・私が中で自殺未遂も3回くらいしましたし、で、その自殺未遂未遂したことで、自殺予防房みたいなのがあって自殺できない仕組みになってる部屋に入れられるんですね。それでも死にたくなるから、窓に突進して、窓に顔をぶつけたら死ねるかなと・・あるいは、チョコちゃん(愛犬)を、どこに居るか判らないけど救いに行かなきゃいけないので、チョコを救いに行くためには窓を突破しなきゃあって思うんで・・・窓にとにかく突進するんですね。

 突進する度に頭ぶつけてコブ作って、引っくり返って気絶したりしてるのを見るに見かねて、その方がよくお部屋に呼んでくれるようになって、

 『死んでも何にもならないし、頭ぶつけても簡単に人間て実は死ねないし、拘置所で死ぬとすごく醜くて、あとの処理も大変だし、自分が預ってるこの場所では自殺者ひとりも、自分の責任上出したくないから、まあまあここに来て話をすることで少し気が紛れるなら来なさい』って言って何度か呼んでくれて、色んな話をしてくれる中で、

 『(手紙は)全部読んだけど、自分も無実だと思う。何かの間違いだと自分も思っている。自分は名前を教えられないから自分がそんなこと言ったって意味ないから・・力はないけど・・でも読んだかぎり、その人たちにも通じているから、アメリカへ送られちゃうけども、手紙を受け取った人も多分無実を信じてくれてるから、・・・
 これは何かの理由があって、アメリカの誰かがすごくあなたに会いたがって誰かが呼んでるか、これからすごい人に会うことになるか、あるいは、すごい使命を持ってて何かの使命のためにこれからアメリカに出かけるんだから、その何かの使命を果たすなり・・・負って、また帰って来てください。
 死なないでください。少なくとも私はそれを信じて待ってますから』って言ってくれて・・・そうやってお部屋に何度も呼んでくれたんですよ。

 ■岩上: う~ん、いい人も居ますねえ。

 ●サラ: だから、どこにでもね。制度は非常に過酷で、国家権力というのは本当に暴力そのものなんですけど、でも、そこに携わる人達は、ただ自分に与えられた仕事を日々黙々とこなしているだけで、かつ生身の人間ですからやっぱりその人達の中には非常に人間的な人-遠慮がちにも、こう心配してくれるような暖かい血の通った人-というのはどこにでもいらっしゃるんですね。

 ■岩上: 特にその、下で権力をね、持ってるわけではないような、権力の末端でしょうけども、そこから離れたら本当に草の根の一庶民でしかない人達ほど、暖かい気持ちをお持ちだったんですね。日米共に。

 ●サラ: そう・・アメリカでも刑務官や拘置所長さんが味方で、それで助けられてるのを日々感じていましたからね。だから、アメリカにも怨みは、私は持ってない。

 国家の恐さは、この事件の前からそれなりに解っていたつもりですし、共謀罪の恐さも聞きしに勝る、本当に恐いものだったし、理不尽なものだし・・・でも人間に関しては今でも希望を持っていて、それはどこの国でもいらっしゃるわけでね。だからアメリカも制度は何とかしなきゃいけないし、日米犯罪人引渡条約も何とか変えいけないけれども、人間・・・

 ■岩上: (日本という)国家も何とかしなきゃいけない。よその国に好いように操られているような国家では困るし、またその国家の頂点に立っているようなトップのね、大使まで務めているような人が「私は知らない」でね、・・知らなくても、それはアメリカ国家を左右するようなことは出来ないにしても、ほんのわずかな、たとえばチョット当座のお金を貸すくらいのことは・・(●サラ: それもなかったです。)・・いい弁護士を紹介するのでも、医者を紹介するのでも、何かチョットした親切をしてあげることでよかっただろうし・・

 ●サラ: なかったです。その方は叙勲でその後勲章を受けられましたね。
 そいう人が勲章受ける国なんですね。

 ■岩上: 国というのはそういうもんなんでしょうね。しかし、そこは救いですね。あったかい、温かみのある思いやりというか・・それは、何も無いからなのかも知れないけれど、そういうものをお持ちの方がね、日本にもアメリカにも地の底みたいな処にこそ、人が息づいている。

 ●サラ: で、結論になりますけれど、同房者の一人が、私に似てる政治犯で彼女自身は当時のブッシュ政権の大統領首席補佐官の★
アンドリュー・カードという人のいとこで、私はアフガン戦争に真っ向から反対して、テロ特措法成立に反対して、入れられたと思っているんですけど、彼女も別件でスパイ罪で逮捕され、愛国者法で逮捕・起訴された初めてのアメリカ国民なんですけれども・・・彼女がたまたま同房者だった時に、やはり周りの皆さん、精神とか身体を病んでるんで、皆さんがよく私を「看護婦さんみたいね」と言われたんですが、自分も病気だったけれどもエイズの患者や末期のガン患者や精神を痛めた-心を痛めた、そのアンドリュー・カードのいとこのスーザンっていう女性を看病したんです。
 ★アンドルー・ヒル・「アンディ」・カード・ジュニア(Andrew Hill "Andy" Card Jr. 1947年5月10日~- )


 大勢の人を慰めて看病する中で、すごく日本女性の評判が、その閉鎖された、とても悲しい空間の中で高まったんですね。だから、じゃあ皆のなるべく奉仕をして、日本の好い印象を残して、一期一会で多分もう残りの人生で会うことのない人達だろうから、できることをしてあげようと思って、文盲の人には代わりに手紙を書いてあげたり、スペイン語しか解らない人には弁護士宛ての手紙を無料でタイプしてあげたり・・・

 
 ●山崎淑子さんインタビュー(19)    <了>。
      


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