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●陸軍の裏側を見た吉薗周蔵の手記(40)-1
 ●陸軍の裏側を見た吉薗周蔵の手記(40)-1   

  王希天が自ら望み甘粕正彦が企んだ震災下の虐殺 


 ★唐突に十二月から始まる「上高田日誌」空白の謎 


 大正十年三月、周蔵は野方町上高田九六番地の第二救命院を訪れた。六年秋に京都から連れてきた渡辺政雄をここに住まわして、ケシ栽培の研究を頼んでいたが、近来多忙のために足を向けなかったのである。そこで偶然来ていた呉達閣(別名・呉瀚濤)と周居應と会い、周の本名が王希天であることを知った。

 周蔵は時々見回りに行った上高田での見聞を「上高田日誌」の形で残しているが、渡辺から「こんなことして何になるか」と聞かれ、「特務の心得として必ず点けろと、石光(真清)さんに教えられた」と答えた。「上高田日誌」によると、政雄は大正七年の春から手伝いの女を一人入れて耕作を始めたが、四月には四寸迄に伸びたケシは、八月には取るには取れたが、質が良くない。翌八年には、ケシ苗を育てるムロを作ったところ、芽生えが早く、勢いも良かったが、五、六月に移植に失敗して全滅した。急いで直蒔きしたら芽が出たが、雨が続いてこれも全滅する。

 右(上)に続く記事は、唐突に十二月から始まっており、「政雄が土に灰を混ぜて来年を待っておる」との内容であるが、八年の事か元年の事か分からない。大正九年は周蔵にとっては実に多事の年で、一月に上原勇作邸で憲兵中尉の甘粕正彦に引き合わされ、三月には甘粕から山県元帥暗殺未遂犯の伊達順之助の隠避を依頼され、五月には奉天特務機関長・貴志彌次郎の支援のために満洲に行かされ、朝鮮を経て帰国の途中熱病に罹りながら、八月末に帰宅した。十月からは松沢病院長・呉秀三の勧めで漢方を習うため、四谷の帝国針灸漢方医学校に通うが、校長の周居應が実は王希天であった。周から大森に連れて行かれ、女子医専の設立を計画中の額田兄弟医師に会わされる。他にも大谷光瑞師の要請で面倒を見ていた佐伯祐三の結婚、更には会ったこともない婚約者の出産などもあった。

 これだけ忙しいと上高田に行けないのも分かるが、ある年の記録がいきなり十二月から始まるのはいかにも唐突である。大正元年の「上高田日誌」には、私(落合)に見せたくない内容があって、除かれている可能性もあろう。ともかく、十年の三月に上高田に行ったら、先月稿で述べた如く、其処に周居應と呉達閣がいたわけである。

 「上高田日誌」のその続きは、「二月 周先生カラ アヘンノ苗ハ水分ヲ嫌フヨ ト教ハル由」とあるから、時は既に大正十一年の二月に遷っている。この間、周居應こと王希天は、時々政雄を見舞いに来て、ケシの栽培法を指導していたのである。周蔵がその二年前に、鎌田医師からこの人に学べと教えられ、周居應の帝国針灸医学校に入ったのは、ケシの一種コマクサの製剤法を教わるためであった。しかも王希天は、ケシの栽培にも通暁していた。


 ★ケシ栽培に精通し、高度の諜報術を体得した王希天 


 周蔵より二歳下で、当時二十四歳の王希天になぜそのような知識があったのか。吉林省は長春生まれで、十二歳で小学校に入り、高小を出て大正元年に吉林一中に入学したのは十六歳で、呉達閣と同学年になった。三年生の時に学校紛争で退学になり、天津南開中学へ転校、再び呉達閣と同級になった。この経歴からすると、王がケシ栽培と漢方医学を体得したのは天津へ移る以前の十八歳までと見るべきであろう。希天が学んだのは農事、漢方ばかりでなく、変装諜報などは朝飯前の高度の諜報術を体得していた。

 呉達閣も、周蔵が大道芸人風の武術の達人と観察していたから、彼らはある特殊な事情から幼少時に何処かで基礎的訓練を受け、天津に移ってからも、南開中学の周辺で本格的な訓練を受けたと見るべきであろう。しかも、希天はその期間に既に長子を成していた。真に恐るべき早熟の天才肌であった。

 ある特殊な事情として私(落合)が推察するのは、丹波の大江山衆の関係以外にない。呉達閣が士官三傑の一人呉禄貞の実子で、呉禄貞が丹波衆の血筋であることは、伝承に基づき先月稿で述べたが、長春の皮革商・王立廷の子息に生まれた希天にも、同じような事情があるのではないか。馬賊の跳梁する吉林での鍛錬は、天津南開中学の外郭での訓練に、カリキュラム的に繋がっている筈であり、ここに丹波大江山衆と天津南開中学を拠点としたワンワールド衆の深い関係を想像せざるを得ない。

 「上高田日誌」に戻る。「因って、水を吸う竹藪が都合良しとのことで、竹藪を借りたい」との政雄の言で周蔵は、竹藪の地主の鈴木質店に話してくれるよう、藤根に頼んだ。現在「日興パレス」と云う名のマンションが建つその地は、藤根の依頼で鳶の細井が借りてくれた。

 その竹藪に直播きしたケシの育ち具合を、三月、四月と周蔵が見に行くと、本数は少ないが幹は太かった。七月になり、竹林のケシから収穫したアヘンは良質で、周居應(=王希天)は大層喜んだ。王希天の助言によって、四年ぶりで、やっとケシらしいケシができたのである。元来ケシ栽培の実務に窮した周蔵が教えを請うたのは、政雄の祖母のウメノが紹介した呉達閣であった。「周蔵手記」には、これより前の大正十年十一月条に「周先生は相変わらず御調子が良い」とあるが、東大法学部に通っていた呉達閣に関する記事は全然ない。達閣はまた、京都以来の政雄の親友であった。その政雄が東大法科の学生として東京に居るのに、その名が「上高田日誌」に出てこないのは真に不可解であるが、無論事情があるのであろう。


 ★周蔵にも理解しがたかった南開ワンワールドとユダヤ


 ケシ栽培の成功を喜ぶ周居應は、「周さんとは言わず、王さんと呼んでほしい」と言った。「タノンマスト 云ハル」と、その口調を周蔵がわざわざ傍線付きで書いたのは、こなれた日本語に秘かに舌を巻いたからであろう。「四谷の帝国針灸医学校では周先生と呼ぶように」とのことであった。彼らが通う四谷城西教会に関心を持った周蔵が、政雄に尋ねると、「ダフヤラ 日本人デモ名ダタル人物、多ク通フラシイ」とのことである。「キリスト教徒の外人なら分かるが、日本人は一体、教会に何をしに行くのか」と問うと、「意外と日本の内部情報を売っているのではないか」と政雄は答えた。

 政雄も政雄で、「目分は彼ら(南開ワンワールド)の仲間ではないから」と言いながら、いわゆるユダヤについて、いろいろ教えてくれた。政雄がその事を良く知るのは、生家が丹波亀岡のアヤタチ上田家の血筋だからである。周蔵の聞く処では、外務大臣・陸奥宗光の子息・陸奥広吉が民国留学生を援助している。共済会の設立にも協力を約したという。ここでいう共済会は一般名称でなく、大正十一年九月二十一日、大島町三丁目二七八番地に王希天が設立した僑日共済会の事である。つまり、陸奥伯爵が希天らの支援をしていた。

 仁木ふみ子『震災下の中国人虐殺』によれば王希天は、「大正十年秋、(療養先の長岡温泉から)東京へ帰って、ポンピドー帰国のあと牧する者のいないメソジスト教会代理牧師として、また中日青年会幹事として働き、留学生に大きな影響を与えた」とある。実際は、仮病の結核の療養を装いながら、大正九年秋には周居應の変名で、白髪交じりの付け髭で老人に扮して四谷に帝国針灸漢方医学校を開いていたのだが、本名の王希天では、九年八月に(多分アルサスヘ?)帰国したポンピドーのあと牧師不在となったメソジスト教会の代理牧師となり、また中国青年会(神田北神保町に在ったYMCA)の幹事にもなった。

 周蔵から見ると、彼ら民国留学生は日本を探っているように見えるし、また彼らの都合に合わせて無知な日本人を教化しようとしているのになぜ陸奥宗光が国家の力をこういう者に貸そうとするのか分からない。彼らが考え違いをしていると思う周蔵は、★広吉が留学先の英国でワンワールドに入会し、外人娘を嫁に貰って来たのを知らなかったようだ。陸奥は共済会の会長となった王希天に毎月五〇円の援助を申し入れたが辞退された。

 陸奥と彼らの共通の奥底が、いわゆるユダヤだとの説明を、政雄から受けた周蔵は、そのユダヤが何かが分からない。政雄は「一つの人種で国を持たぬ種族」と謂う。しかし、それがなぜ周先生(王希天)と関係があるのか。「難しい、理解しがたい」と記した。「それに日本人も多いとのこと。国を持たぬ人種に日本人が何故多いのか。難しい。宗教の事かとも思う」。


    (40)-2 へ続く。

   


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