カウンター 読書日記 ●満洲国の断面 (13)ー1
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●満洲国の断面 (13)ー1
 ★岸流兵法の第一課 (1)

 岸信介と組み甘粕を満映理事長に推すこと
 軍司令部の反対にあって人事難航すること
   
 
 使節団の任を果すや、甘粕は協和会総務部長を辞し、大連の私宅に引きこもり、モーターボートを海に浮べて、魚釣をして暮していた。この年(1939)三月、私は総務長官・星野直樹に抜擢されて、総務庁弘報処長(情報局長)に任ぜられた。

 夏になって、岸信介が産業部次長から、総務庁次長に転じ、星野直樹助けた。実に、満洲国の全盛時代であった。

 弘報処長となって、私が第一に手をつけたのは、満洲映画協会(満映)の改革であった。岸が総務庁に乗りこんでくる前、産業部には涜職事件が起った。満洲国始まって以来の表沙汰になった、日系官吏収賄事件であった。官吏が業者と結んで賄賂を取ったというのである。日系官吏全体の威信に関するため、これを新聞に出すか出さぬかで私も関係した。ところが、私の主宰する弘報処の中にも、何となく臭いにおいがあり、他の役所のことを言っておられない虞があった。それは満映問題であった。

 満洲映画協会は五百万円の資本金をもつ株式会社で、政府と満映とが半々ずつ出資していた。政治の統制権をもっていて、日本及び中国から輸入する映画は、映画統制法という法律の力ですべて満映に入る。満映はこれを全国の映画館に配給し、配給料を取る。その利益をもって映画の製作ををやっていこうという会社であった。だから劇映画、文化映画、ニュース映画をどしどし製作し、民衆にこれを与えて行かなければならかい使命をもっていた。

 ところが、統制権の上に坐って、配給の利ざやを取り、製作の方ばあまり成績が上らない。スタジオだけは東洋一と称する大きな建物を建築中だったが、内容はすこぶる貧弱であった。関東軍報道部の一将校と、満映の幹部とがすこぶる緊密で、弘報処の役人のある者もこれに加わり、宴会ばかりやっているという噂があった。政府の満映に対する監督権はあまり行われておらず、役人が満映のため斡旋(あっせん)これつとめるという態度で、各方面から非難されていた。ことに新京憲兵隊は、満映の内情にさぐりを入れていた。軍の腐敗とからんでいるからである。

 会社自体に関しても、また会社の幹部一人一人についても、私の部下に関しても、いろいろな注進が私の耳に入ってきた。

 そこで、この年の七月、私は星野直樹に満映の改革を提案した。満映を粛清し、ニュース映画、文化映画、劇映画が満洲でどしどし生産されるように、もって行かなければならない。そのためには、甘粕正彦をもって来て、理事長(社長)に据えたらどんなものであろう、とおそるおそる切りだしてみた。星野は答えた。

 「関東軍に片倉哀がいたら、できるけれどもなあ。片倉がいない今日、実現はむずかしいよ。」
 星野は報道部将校との間に、満映問題で、いざこざを起すことを好まなかったので、私の提案にはとりあわなかった。

 そこでこの問題は一応ひっこめて時期を待つことにした

  私が、満映社長のはまり役として甘粕に眼をつけたのには理由がある。国策映画会社の社長は第一にすぐれた経営の才を持ったものでなければならない。第二に独創的な能カを持ったものでなければならない。第三にやくざを押えるだけの迫力をもったものでなければならない。第四に文化全般に深い理解をもったものでなければならない。甘粕はこの四つの条件に充てはまる人物であった。しかも彼はベルリンで私を伴ってウーファの視察に行った。彼が映画製作にに興味を持っていることはまちがいない。何とかして彼を引ぱり出そうと私は機会を狙っていたのである。

 八月になると、産業部の涜職事件は起訴になった。この件で、私は転任して来たばかりの岸信介と打合わせをした。話のついでに、産業部だけでなく、私の膝元にも、火がつきそうだといった。すると岸は「僕もそのことを心配していた」と答えた。岸のところにはすでに情報が入っていた。

 そこで私は満映の改革論を一席やった。岸は目玉をぐるぐる動かして聞いていたが「ふん」と一言いい、まるで私を試験するような口調で、
「どうしたら改革が実行できるか」
 と聞いたので、私は
「役人が特殊会社の重役を呼びつけて、あれこれと叱ったり、指導したりしたところで、彼らは言うことをきくものではありません。役人の方が彼らにあしらわれてしまうだけです。特株会社監督の失敗はこの点にあるのです。彼ら・の方が役人よりも、うわてですからね。だから、一人の人物をもって来て、会社の頭に据えることです。そうすれば、役人がとやかく云わなくとも、その人の力により会社の建て直しはおのずからできます。」

 岸は身体を乗りだして「ほほん」と言い、
 「その通りだ。では誰をもってくるか」
 と言うので、私は言下に、

 「甘粕正彦」
 と答えた。

 すると岸はぽんと膝をたたいて、
 「それアたいした考えだ。実行しようじゃないか」
 と、たちまち乗り気になって来た。

 そこで私は
 「実は長官に相談したが、片倉がいたらなアと言って、尻込みしていますよ」
 と言ったところ、

 岸は「よろしい。僕がやる」
 と言いだしたので、ははあ、これは相当な人物だぞと思った。

 「ではよろしく願います」ということで、甘粕引きだしを岸に頼みこんでしまった。

   続く。 
 
 

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