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●「惨事」の周辺 (2) 対談― 日本の貧困を考える
 ●『週刊読書人』 湯浅誠・堤未果 対談

 日本の貧困を考える。
   

●『週刊読書人』 (6月13日 第2742号)の巻頭は、湯浅誠・堤未果両氏の熱のこもった対談である。

前者は、『反貧困』他の著書と実践で知られ、後者はベストセラーとなり今も読者を獲得する、『ルポ 貧困大国アメリカ』で知られる。

その二人の対談(適宜略しながら)を紹介していきます。


 ***************

★ 社会のシステムの問題 ―  根本から考えていくべきこと

堤: 湯浅さんの『反貧困』、すごく面白く拝読させていただきました。・・・
湯浅さんの本を読んで、改めて日本もかなり大変な状況だなと思いました。そう思う一方で、変化を求める連隊のエネルギーみたなものも強く感じられ、・・・こういう本の売れ行きもいいというのは、日本もまだ捨てたものではないですね。

湯浅: おそらく小泉改革で行き過ぎてしまった部分があると思うんですよ。・・・
 そのことはみんな、さすがにわかっていて、なんとかしなきゃいけないと思っている。
 ・・・大多数の人が、一度ブレーキをかけなければいけないと思っている。
 その背景には多分、日本もアメリカほどひどい状況になってはいけないという気持があるんじゃないか。
 堤さんの『ルポ 貧困大国アメリカ』はある意味で、今の日本の進む先にある不安を
具体化された。・・・私の本について言えば、すでに日本もここまできてしまったのかという現状を書いた。・・・

堤: ・・・湯浅さんの本がいいと思うのは、まず、貧困を単に一過性の問題として扱っていないことです。・・・現状のルポを書きながら、その根本にある社会のシステムの問題をきちんと抑えられている。・・・
話は変わりますがこの前「朝まで生テレビ」に出られたんですよね。

湯浅: 正直なところ、ひどい内容だった。・・・経営サイドで出ている人、自民党の議員、司会者も含めて、基本的に貧困問題に関心がない。
結局、繰り返して言うことは、経済が成長すればなんとか解決できるというわけです。

堤: まだそんなこと言ってる人がいるんですか?

湯浅: それも本気で言ってるんです。いい加減、あきれ果てました。・・・
 わたしの考えは甘すぎました。経済の成長によって貧困問題は解決するという彼ら(自民党代議士や経営者達)の考えはまったく揺らいでいない。だからこちらの意見をきちんと話すチャンスもなかった。・・・
 貧困層の人はかわいそうだけれど、処方箋は、企業が成長していくしかない、という結論になる。
 ・・・結局、直接対話で考えを変えてもらうなんていうのは無理なんですね。

堤: それは日々感じることです。・・・
 年配の人と話をしていると、根本的に、今何が一番問題になっているのかを知らない人が多いですよね。・・・
 私も、わからない人を説得している時間はないから、ピンとくる人をできるだけ集めて、動いたほうが早いと思っています。・・・
 湯浅さんが事務局長をされている「反貧困ネットワーク」の人たちと繋がったりしながら、速やかに行動した方がいいと思う。おそらく今自分とは関係ない世界の話だと思っている人たちも、後になって、決してそうではなかったことを、嫌というほど思い知ると思いますね。

湯浅: そうですね。それは最初に話しをした。アメリカにおける中流の崩壊みたいな話しに繋がってくることで、日本も段々人ごとではなくなってきているわけですよね。

堤: 日本の中間管理職の人たちも結構悲惨な状況に置かれていますからね。

湯浅: 中流の崩壊と貧困の問題が結びつけて考えられていないこと自体がまた別の大きな問題ですよ。格差を話題にする時も、正規雇用者が勝ち組で、非正規雇用者が負け組という対立にさせられるんですが、あれも根本的におかしい。今やそういう対立軸では考えられないわけです。・・・
 アメリカではどうですか?・・・

堤: ・・・中流の人たちと言っても、アメリカの医者はものすごく厳しいんです。病院もどんどん株式会社されているから、利潤を追求していて、そこで働く医師たちは過労を強いられる。医療訴訟問題も大きくて、(訴訟対策用の)保険にかけるお金が年間18万ドルですよ。20万ドル稼いでも、2万ドルしか残らなかったら完全にワーキングプアです。・・・
 身近な例では、日本に住む私の周りにいる30代の働く人たちに目を向けてみても、職場などでかなり追い込まれている人が多いと思うんですよ。

湯浅: 全体的に余裕のない人が増えてはいますよ。

堤: 余裕がないし、すべてに競争が入ってくるから、連帯もできない。・・・
 そうやって、中流の人たちが落ちていく(教師の登校拒否、「鬱」~精神安定剤に頼るなど)ということは、みんなが瓦解するっていうことですよ。

湯浅: ・・・今回アメリカに行って、感銘をうけたこともあるんです。国はひどいんですが(笑)、活動が非常に元気だということです。・・・(移民を中心とした新しい形の労働運動など)どこも、いろいろ工夫しながら活動している。
 考えてみれば、アメリカの労働運動における移民というのは、位置づけとしては、日本における非正規雇用の人たちみたいなものだったと思うんです。その人たちと一緒に活動していくという流れが、90年代からは当たり前になってきている。特にロサンジェルスは先進地域だと言っていましたが、メキシコやペルーからの移民たちが、日常的なスタッフとして一緒に働いている。あれには、ひとつの可能性が見えました。
 日本の労働運動も、非正規雇用の人たちが三分の一ぐらいになると言われているわけだから、その人たちと一緒にやるようにしないと、このワーキング・プア化、切り下げられていく状況には歯止めをかけることはできない。・・・
 自民党の中にだって、新自由主義政策に疑問を抱いている人たちがいて、彼らと一緒にやっていけるべースを作らないといけない。

 ★ 新しい労働運動の形 ― ひとつの可能性として

堤: 湯浅さんがおっしゃったように、アメリカの場合、新しい形で運動を実践している人たちがたくさんいます。・・・
では(そういう文化のない)日本の場合、どうすればいいのか。メディアが悪いとか、自民党が悪いとか言っているだけでなく、少しでも話がわかる人と、とにかく手をつないで行く。メディアだって、育てなおすのは充分可能なわけだから。大手新聞社の記者の人たちでも、ひとりひとり話をすると、志の高い人がいる。
 そういう人たちと手をつないで、一緒にやっていく。表面上その人たちが物を言えないなら、言えるようにするために、企業のやりかたのおかしさについて、私たちが声を上げていく。アメリカでは、政府や大企業に向かってどうやって声を上げていくのか。大企業であれば、消費者としてこっちが優位に立てる。政府であれば、有権者として優位に立てる。その武器を使わずに、批判するというだけでは、60年代はよかったのかもしれないけれど、今はだめだと思いますね。問題のある企業がメディアを支配して、政府と癒着しているのなら、私たちが育て直さなければいけない。企業がおかしいと思ったら、企業の資金力だけを見て諦めてはいけない。具体的には、ある企業の製品を消費しないという方法もある。逆算して考えていけば、必ずやり方は見つかると思うんです。ただ、そうやっていくと、消費市場の中で、便利さや快適さを追求してきた生活スタイルについても、見つめ直さなければいけなくなりますよね。最終的な責任は自分に向かってくるわけです。

 ★消費者運動の建て直し  企業といかに闘っていくか

湯浅: 日本から見ていると、アメリカは消費者運動が盛んですよね。ラルフ・ネーダーが、15万人を超える大規模の「パブリック・シチズン」を作ったり、消費者の権利行使がきちんとなされている。その点は、日本がとても弱いところです。ボイコット運動もうまくいっていない。日本の場合、ボイコット運動は、すごく自然発生的に起こるわけです。毒入り餃子事件の時がそうですが、みんなが 一斉に買い控える。遺伝子組み換え大豆についても同じです。組み換え大豆を使用した納豆を買わないというのは、どこかで誰かが声を上げて運動を作ったのではない。消費者が自然に拒否した。それはボイコット運動ではなく、単に自分の体に入るものだから嫌だっていうことから来ている。
 
堤: 非常に皮膚感覚的ですよね。

湯浅: そうです。生活保守主義的なんです。別にそれ自体、悪いことではないけれど、日本の消費者運動とアメリカのボイコット運動の違いを考えると、こういうことがあると思います。遺伝子組み換え問題の場合、日本は、人体への影響面にしか目が向かない。アメリカの場合、もうひとつセットになっていて、結果として、第三世界の途上国の農業を破壊することになるのではないかと、社会的な問題が必ず語られます。日本の自然発生的な買い控えには、その面がない。だから食品については敏感に反応するけれど、自分の服がどこで作られているかには、ほとんど関心がない。
それが日本でボイコット運動が大きく巻き起こっていかない理由なんじゃないか。たとえば、大きな社会問題になりましたが、キヤノンが偽装請負をやっていることがわかっても、キャノン製品の不買運動には繋がっていかないわけですね。それは我々の力不足でもあり、日本の消費者運動の弱さだと思っていて、企業がフリーハンドに好き勝手にできる、ひとつの要因としてあると思います。日本は労働運動も元気にならなければいけないけれど、消費者運動の建て直しも課題になっている。私は貧困ビジネスについての批判もしていますが、その問題は、ある面で、消費者運動として立てていきたいと思っているんですよ。日本の消費者運動は貧困ビジネスの問題を取り扱ってこなかったから、そこを繋げる形でやっていきたい。

堤: それはすごくいい考えですね。本にも書きましたが、アメリカで不買運動をやっている牧師さんと話をしたことがあって、彼がこう言ったんですよ。アメリカ人は権利の部分に敏感であるけれど、日本人はそうではない。だから企業がどういうことをして消費者の権利を侵しているのかにも敏感ではない。あるいは逆に、自分が他の人の権利を、海の向こうで奪っているかもしれないという認識も弱いんじゃないかと。少し関連した話をすれば、この前、労働相談センターの人と話をしたんですよ。その人が言うには、相談の電話をしてくる人で、残業代の請求をすることが自分の権利なのかどうか、わかっている人が少ない。何時間以上の労働は国際法違反になるということを認識している人も、ほとんどいないということなんです。

湯浅: それは、生活に困窮して、「もやい」に来る人たちと同じですね。生活がどうにもならなくて、なんとかならないだろうかと相談される。でも、生活保護を申請する権利があることを最初から認識している人は、ほぼ皆無です。もちろん、労働に関することに比べれば、はるかに権利意識を持ちにくいとは思いますが。

堤: 残業代なんて出ないという話も、昔は当たり前だったと言う人もいますけど、それでもきちんと生活はできた。今だと餓死する可能性だってありますよ。そこが理解されずに、生活はできるだろうと思われている。

湯浅: 「昔はみんな貧乏だった」とか、団塊の世代の人たちがよく言うんですよね。「若い時は、貧乏でいいんだ」と言うわけです。でも、彼らは、そういう暮しをしながらも、段々と生活がよくなっていく経験もしていますから。我慢しながらこつこつ頑張ってやっていけば、そのうちよくなるという思いが、彼らの頭の中にはある。

堤: 未来は明るかったわけですからね。

 ★「恐怖心」を越えて ― 真実だけを相手に手渡す

湯浅: 今の若い人たちは、この貧乏な状況が、この先もずっとつづくんじゃいかと思うからこそ悩んいる。実際、今後、上がっていく保証は何一つない。現実的に、国会議員たちも、昔みたいな右肩上がりの成長はないと言う。だから大盤振る舞いもできないので、社会保障は抑えなければいけないと言っている。一方で成長を期待し、一方でそうではないと言う。そういう使い分けがさているわけです。そんな
彼らに理解を求めても無理なのかな。

堤: 湯浅さんたち30代で、きちんと現実をわかっている人がもっと前面にオピニオン・リーダーとして出て行って、メディアもそれを大きく取り上げるようにならないといけないのかもしれませんね。・・・

湯浅: 2月から、人事院が官僚を集めて開く研修に呼ばれるようになったんです。今月も官庁に入りたての1年生たちに、初任者研修をすることになっている。彼らにも真剣に考えてもらいたいですね。

堤: そう思います。本当に官僚の意識を変えていかないと、この国を変えることはできない。・・・
 湯浅さんが、官僚に対して研修するなんて最高ですよ。是非厳しく(笑)

湯浅: 厚生労働省と団交でやり合う時よりもはるかにやさしく話しています(笑)。研修の場ではけんかにならないから。

堤: 対立するというより、彼らを育てていくという考え方がいいのかもしれませんね。アメリカで運動している人たちの話を聞いていても、「対立するな」「育ててやれ」という話をよく聞きます。そこが60年代と1番変わったところだと思いますよね。それは決して相手を洗脳するということではない。人間は真実を手渡せば、必ず善きものを求めて立ち上がる本能を持っている。では、その時に、何が1番障害になるのか。アメリカ人に聞いたことがあるんです。その人はこう言いました。「恐怖心」だと。
 現状がこれだけひどいから、社会を変えたいという気持ちが強くなり過ぎると、こういうふうにしろと結論まで押し付けるようになってしまう。それは「恐怖心」からくることである。真実だけを手渡して
結論を相手にまかせるのは、すごく怖いことで、相手を信頼しなければいけないし、辛抱もいる。先ずは自分の中の恐怖心に勝たなければいけないと、アメリカ人らしくない謙虚な言い方をされました(笑)。

湯浅: なかなか深い言葉ですね。

堤: 新しい市民運動の形だと考えさせられました。やっぱり自分と向き合う方が怖いですよね。社会への怒りをエネルギー源にする方が楽なんです。運動がそういう方向に進めば、流れ自体が大きく変わるのかもしれない。

湯浅: そうですね。集会で発言する当事者たちも、こうすべきだということはあまり言わない。自分たちの実情についてぽんと投げかける。だからこそ1番訴えかける力を持つ。聞いている側も、なんとかしなければと自発的に動く。そういう意味では、我々みたいな人間が演説して、こうすべきだと言うよりも、はるかに訴えかける力は強い。堤さんが言われた言葉は当たっていると思う。そんなふうに活動をしていけたらいいですね。

堤: 自分との戦いだから最初は大変かもしれませんが、どんな人間でも信頼されると、それに応えようとする気持ちはあると思うから、そこを信じてやってきましょうよ。

  (おわり)
 
 

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