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●杉山茂丸の実弟・龍造寺隆邦
●52 支那は永久亡びぬ国

   一場の観劇心頭を刺され 対支議論傍若無人 


 段々記述する如く、龍造寺と云う男は、庵主が全国幾百千の人と交際する中で、嶄然(ざんぜん)として一色彩を輝かして居た変わり者であったと云うに躊躇せぬのである、庵主の畏友頭山翁の如きも「あの龍造寺と云う男は、貴様の弟ではあるが、貴様より「2、3割方豪い(えらい)男であるぞ」と云うて居た、庵主も常にそう思うて居た、元来が倜儻(てきとう)不羈の所に一種渾然たる柔軟性を持ち、改悛の力に富んでいるから、どんな六ケ敷(むつかしい)先輩長者でも、龍造寺の前には、ころりと転ばされて、愛僯の情を垂れられし事ある、所謂大事に接触し得る資格を持って居た事は、庵主今尚お忘却せぬのである、夫(それ)が青年の第1歩に於て其の出発を過ったが為めに、生涯此の器才を国家社会の上に試みる事が出来ずして死んだのは、庵主幾年の星霜を経過しても悵然(ちょうぜん)として愛惜の情に耐えぬのである。

 扨、龍造寺が東京住居の中に日露戦争も終息し、大勝利を占めて国民全体が戦勝の酒に酔うて居る頃、龍造寺は庵主の処に来て斯く云うた。

 「私はお兄さまのお蔭で後れ馳せながら国家社会の事を考える憂国家の仲間に這入りましたが、元来東洋の安寧を生命とする我が邦は、まだ大なる仕事が残って居ると思います、日本の存立を外から壊わす露国は膺懲しましたが、東洋を内から壊わして日本を危殆ならしむる支那と云う物がござります、此の始末を適当に付けて仕舞わねば、日本は決して安全でないと云う一大事が残って居ます、故に私は及ばず乍ら、其の始末に取掛って見たいと思いますが、日本には兄さんが居らっしやるから、私は支那に這入りまして、適当な仕事を仕手見ようと思います、どうかお許しを願います」 と云うから、

 「其の考付は至極好い、俺も永年其の事にかかって居るが、中々六ケ敷事である、併し支那に入込むのにどんな手蔓で往く積りか」

 「はい、夫はこんな書面往復の結果で参ります」

 と云うて見せた数通の手紙を庵主が見て先ず一驚を喫したのである。

 「是は支那革命の頭目数名との往復書類ではないか、殊に其の物資の問題に対する条項に対して貴様の考えはどうする積りか」

 「夫(それ)が主眼で、革命党の内外に或る力を漂わして見る積りでございます、殊に私の刎頚の友2人は横浜、上海にある英商と連絡して、此の照電を受取りましたから断然出発したいと思います」

「よし夫なら或いは東洋問題の一端を得るかも知れぬ、併し茲に1条件がある。『夫は貴様は此の事業を最終として其の成敗に拘わらず必ず死すると云う決心があるか、再び俺に遇わぬと云う覚悟があって出かけるのか』夫が聞きたい、苟くも身を君国の大事に任ぜんとする時、微塵でも死生に纏綿した観念があっては、全部駄目である、夫はどうじゃ」

 「其の儀に付いては篤と考えまして上海上陸の上、此の手紙を家族及恩顧の人々へ出す積りで已に認めて置きました」

 「むう・・・此の手紙の決心なら宜い、貴様も国事家の開業式であるから、見苦しい事の無いまで決心をして、心往くまで此の事業に身を打込んで働いて見よ、取敢えず明日は兄弟で今生の訣別式を行おう」

 と約束をして、庵主は種々の薬剤等を取揃え、夫から銀行に談判して、若干の金貨を用意し、之を庵主が青年の時、長旅に出立する前夜に、母の手ずから賜わりしウコン木綿の古胴巻に入れて待って居ると、龍造寺が来たから、直に馬車を共にして帝国劇場へと乗り込んだ、夫からあの食堂の一隅に陣取って、心にある丈けの事、心残りのない丈けの咄をして思い込めし種々の品を手渡して、夫から芝居の見物にかかった処が、其の外題が《白石噺揚屋の段》である、此れを見て居る中に龍造寺は斯く云うた。

 「兄さん、お互い兄弟が今生の離別に催された今日の芝居見は、実に生前死後の好記念とも成りましょうが、私は外題が気に入りませぬから、此の位でもう帰ろうでは有りませぬか」

 「なぜそんな事を云うのじゃ」

 「なぜって、奥州辺陬(へんすう)の土百姓の子の姉妹が、孝貞無双の女性として、其の父を暴言に討たれ復讐の念、燃ゆるが如く、幾多の艱難辛苦を経て天下に其の大志を遂行せんとする此の演劇は、此の女性を主として組立てたる作者に、此の鬚面大男の我々兄弟が何だか揶揄されて、其の鞭撻の策(むち)に耐えられぬような気が致しますからです」

 「成程貴様にそう云わるると、俺も最前から、此の女豪の小娘に責められて何だか男の一分(いちぶん)に気恥かしい心地がして居た処じゃ、まあ芝居は此の一幕切りとして、何処ぞ(どこぞ)恰好の処で咄す事に仕よう」

と云うて又帝劇を出て、ぶらぶら馬車でドライブをしてとうとう上野の精養軒に這入り、一室に陣取って又物語を始めた。庵主曰く、

 「俺は今ひとつ貴様に聞いて置かねばならぬ事があるが、此の間の咄では日本に危害を加える露西亜は懲らしたが、同じく日本に危害を加える支那が懲らしてないから、是も懲らさねばならぬと云うように聞えたが夫に相違ないか、果してそうなら、革命軍に投じて、今後貴様が仕事をするのは、支那を懲らす為めに往くのか、其処はどうじゃ」

 「夫は違います、懲らす懲さぬは、其の時の模様で所謂臨機の処置でございますが、何れにしても日本に危害を加えぬと云う、屹とした安全丈は付けねば成りませぬ、元来は懲らさねばならぬ行掛りに成って居ますが、其の懲らす好機会が日本の無能外交が失なって居ますから、是から私が参りまして、甘く(うまく)工夫をして臨機の処置を取ろうと思います」

 「日本の無能外交が懲らすべき好機会を失うたとはどんな事か」

  
 「夫(それ)は日本は已に(明治)27、8年に於て、或る此の好機会を捕えたから、日清戦争で懲らしました、然るに今度も対露外交の上に此の好機会を捕えたから日露の戦争となりまして、十分な勝利を得ました故に、其の結末には又十分に此の好機会を捕えて、戦果の上に平和の条件を収めねばなりませぬ、然るに全く当局の無能外交の為めに、夫(それ)を失いましたのでございます、而して其の好機会と云うは、彼のポーツマス条約の出来た時に、日本は露西亜と戦うた血刀の儘、夫を北京政府に突付け、『東洋で乱暴を働いた露西亜丈けは、23万の死傷と27億の軍費とを犠牲としてやっと懲戒して、夫はポーツマスの日露講和条約で片付いたが、此の露西亜に乱暴をさせた国は貴様の国である、即ち支那である、日本は露清の国交に付き正当なる外交の手続を以て、10年前よりしばしば抗議と注意とを怠らなかった。

 曰く《東洋の平和を保障する日本、支那の領土保全を主張する日本、即ち日本の世界に対する生存の基礎たる主義に背戻する露清の秘密条約は、終に国家生存の意義に於て大衝突を免れぬから、日本を省いての露清条約はせぬが宜い、日本も其の間に参加せしめよ》と一再ならず警告したに拘わらず、貴様の国は大声に之を排除した、

 曰く《支那は国際公法を解釈したる帝国であるぞ、日本を参加せしむべき必要が有れば、必ず之を参加せしむるであろう、其の必要がないから参加せしめぬのじゃ、且つ思え、露清両国は、三千余英里の土壌を接した隣国である、故に土地民族に間したる外交問題は年中1日も絶えた事はない、夫を一々横から口を入れて、兎や角云われて溜まるものでない、日本に咄すべき事があれば云うから、夫(それ)までは黙って引込んで居れ》と云うたでないか、其の揚句に貴様は、あらゆる武器軍器にも超越したる、土地と云う物を秘密条約で露国に提供して、とうとう南満洲に永久の軍備的設備をさせたでは無いか、故に万止むを得ず、日本は国家の全勢力を傾けて、開闢以来未曾有の大犠牲を払い、やっと喰い止めたのである、左すれば挑発せられた露西亜の乱暴は制止したが、之を挑発した支那は、一層の懲戒を加えねばならぬのである、故に是からぱ貴様の国の懲戒に取掛る事務である、極消極に見積りても、将来永久に2度と再びこんな事の出来ぬ丈けの鎖鑰(さやく)は、押えて置かねばならぬ、日本は此の上今1度、支那の外交行為で、23万人を殺し、27億の国帑を擲って溜るものか、国家は直ちに滅亡して仕舞うから、決して2度とこんな事の出来ぬ丈けの鎖鑰を押える条件は取るぞ』と云うが、外務当局の当然の職責で、世界全国一言も云えぬ、同情せねばならぬ申分でござります、夫に日本の外交官が、北京で仕た北京条約と云うは、どんなでござります、啻(ただ)に支那を懲戒せざるのみならず、無戦争で露西亜に贈った南満洲の租借地を、戦争して大犠牲を払った日本に其の証文の儘を交附したのではござりませぬか、従来此の証文には南満洲の土地は向う幾年の間は、戦争にでも何でもお遣い下さい『露西亜殿』と書いて有った宛名に棒を引いて『日本殿』と書入れた丈けではござりませんか、夫では此の露西亜に対する年限経過の後は、直ぐに支那に引上げられて、又露西亜に名前換(なまえがえ)をされても仕方が無いではござりませぬか、夫で私は全く当局が好機会を失うたと云うのでございます、夫(それ)とても今は過去りし跡事でございますから、私は一身の精を擲ち、邦家の為めに生死を賭して、此の重要関係ある支那に乗込み、一策を画して見ようと思ますので、兄さんの御許可を願うのでございます、其の一策と云うても、今日から十分の案も定めて居ませぬが、大体に於て支那人をして、世界の大勢から、東洋全滅の運命にある事を知覚せしめ、彼の三韓満蒙の如き、印度、波爾斯(ペルシャ)の如く、今や国土と民族の精気を脱落せんとしつつあるに対して、西洋強国が、之に乗ぜんとする有様は、恰も虎狼の前の睡羊に斉しき理を説いて、自覚発奮以て東洋の連衡共立を創立して見ようと云う様な、夢を考えて乗り出すのでござります、夫から先は所謂臨機でございます」

 「むう、まあよく夫(それ)だけ考えた、俺は貴様の考えの経路を賞するのである。

 併し支那の事は、夫が名案の上策ではない、今俺が貴様の考えを定める前に、1,2参考に云うて聞かせる事があるから夫を克く理解した上で、考えを決定せよ、決して忘れてはならぬぞ」

 第1、他の国に相談を初めたり、他の国を動かそうとする時には、先ず己れの国のどんな物かと云う事を知らねばならぬ。
 
 今日本全国の大名巨姓の経綸家を、俺が委敷(くわしく)通覧して見るに、全部悉く支那に対する考えは問違うて居る、夫は
                        
 日本は新進興隆の国である、支那は敗亡自滅の国である」と、こう思うて居るのが大間違いの基である、俺は日本は「即滅崩潰の国である、支那は健全永久の国である」と信じて居る。なぜなれば、支那は往古より1度も全部統一せられらた国ではない、唐虞夏殷周、即ち兎陶文武の聖代と雖も、其の泰平は版図中の一部分の治績である、其の他は悉く自立の王国で有って、僅かに軽些貢物の実あるのみで、夫さえ永く続いた事はないのである、第1、通信交通機関と云う物がないから威令信の実を及ぼす事が出来ない、夫から其の聖朝なるものも盛衰常ならず栄枯時なくし、凋落するから、其の歴史は、黒い草紙に字を書くようにラッキョウの皮を剥くように同じ事計りをして、盛衰凋落して来たのである、始めには仁政で起こり、後には酒と女と建築の3つで潰ぶるるのである、どんな聖代でも、2、3代目から長安宮、西安宿、銅雀台と云うような大建築を始めて、其の重租に狭い区域の人民が耐えられぬ、夫から酒池肉林、夫から官女3千人、夫が衰枯凋落の結論であり、夫が4~5千年も繰り返されて居る、然るに夫でも決して国と民族は無くならぬのである、

 今は通信交通等の道が開けたから、我国より見て敗亡自滅のように見ゆれども、決してそうでない、俺は支那開闢以来の泰平は今日であると思うて居る、現に長安、西安、銅雀の大建築はない、酒池肉林もない、官女3千人もない、支那版図内に較的に世界の大勢にも通暁して来て、夫相当に民族の国家論も、不完全なりに起って来て居る、若し交通通信の無き事昔日の如き時ならば、支那大陸の大々的泰平を謳歌する時であると思う、即ち既往からあの通り、将来も永久にあの通りであって、決して潰れる気遣いのない国である、然るに日本はどうかと云えば民族土地が支那と接同して居ても、彼は大であり、我は小である、彼は此の点丈けでも亜細亜の主人である、我は亜細亜の属小であるは実際である、又文学美術も彼は師で、我は弟子である、只だ彼に勝れる処と云うは・・我は開闢以来の統一国で、彼は開聞以来の不統一国である、我は統治の威霊が益々こ顕揚して居て、彼は全く無威霊の国である、此れ丈けである、故に我天皇は此の理を夙に知ろし召されて、日本の国是を支那領土保全とお定になった、なぜなれば、若し世界の一強国が、支那の領土内に一威霊を輸入して、其の1角に軍備を成す時は、他の強国は機会均等の意義に因って、我も我もと軍備を持ち込んで来る、左すれば、日本は戦わざるに先って、已に軍備に亡滅して仕舞う故に、日本は若し支那の領土内に、軍備をなす者があったなら、国家を焦土にするも、最後の1人となるまでも、犠牲となって、其の相手を打潰して僅かに我国の存立を図る事になって居る、故に支那の対韓政策で、日清戦争を開いて之を懲し、露国の南満旅順軍備で、日露戦争が開かれて、之をヨウチョ膺懲したのである、夫を為ねば日本は直ぐに潰れるのである、即ち支那の一外交の意志で土地を割譲して、外国に与えたならば、直ぐに潰れる程の貧弱な日本である、故に貴様は先ず「支那は永久亡びぬ国、日本は何時でも亡びる国である」と云う1例として、俺の此の咄を能く知了せねばならぬ、夫を知って支那の事を画策せぬ者は悉く駄目である、第二、は支那は世界中で特殊、国家機能を特って居ることを知るのが中々六ケ敷のに、民族と、東洋立国の意義丈を疎通了解して、日本と東洋立国精神の同化を計り、決して其の他に触れざる事が真正な対支政策である。

 ●52  了。
 
 

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