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●『俗戦国策』
 ●コンミッション三百万円
 ●後藤の寝ざめ 


 ●コンミッション三百万円
 *コミッション【commission】
  1 委任。委任状。2 委託業務に対する手数料。周旋料。口銭(こうせん)。
  3 委員会。4 賄賂(わいろ)。◆ 英語では4は、bribe

 夫(それ)から政党屋連と政府の談判は日に日に悪くなって来て、満都の耳目は此の問題にばかり集注する事となって来た。一方、民間経済界の耆老(きろう)や政府の財務当局等は、此の恐るべき「パニック(襲)来」を気遣うて来た。夫(それ)は、此が若し不成立になると、日本無比の巨額の株式を抱え込んで動く事の出来ない幾多の巨頭が、ドタンバタンと大音響を立てて倒産するのであるから、各人目の色を変えて心配する事となったのである。
 其の揚句、政府でも大緊張で調査をした結果、★逓信大臣・後藤新平より、交渉委員へ内交渉して来た。買収価格は、交渉委員等の申出と三百万円以上も安価であったらしかった為め、トウトウ無残にも不調となって、茲に電車市有事件は長い長い間、揉みに揉んだ揚句の果が不成立となったのである。
 ソコデ関係銀行も財産家もメリメリと音を立て倒潰せんとした時、例の村上と小池は徹夜をして各方面に大声を上げて駈け廻った。曰く、

「ヤア・・・皆騒いではイケないぞ、此で電車の市有は極印付に屹度成立するのじゃ、大丈夫じゃから皆騒いではイケない」
 と、声を涸らして駈け廻ったのである。夫で此大騒動をヤッと喰い止め支え付けた後、顔の色を真青にして、息を切って庵主の所に来た。

「先生の御注文通りに、此の通、電車会社総株数の六割一分余に相当する、斯く大株主の委任状を揃えて持って来ましたから、・・・サア屹度成立をさせて下さい」
 と声も息もハズまして責め掛けて来た。ソコデ庵主は、
「ヨシヨシ屹度成立させて遣る、一体此の六割一分の株主が、電車全部を市に売る値段は幾何(いくら)じゃ。其の価格を云うて見よ」

「株主としては、○○○○○○○○円に売れば宜うムい升(ございます)(★此数字は震災で書類が皆焼けたから忘れた)」
「其の値段で、屹度売る契約をするか」
「エーエ、致し升とも」
「此の委任状で、其の公正証書を拵えるか」
「エーエ、今でも致し升」
「夫では云うて聞かすが、此の交渉の成立せぬのは、仲介者に二三百万円の『コンミッション』があるから出来ぬのじゃ、此のお前達が売る値段は、後藤逓信大臣より内交渉に発言した買収価格よりも壱百万円以上も少なくて、お前達即ち株主連の云値の方が安価である、即ち逓相の云う値段は此々であるから、今お前達が云うよりも高いのである。夫に交渉委員の云う値段は此逓相の云うのよりも其の上に三百万円も高いのであるから、お前達の真に売る値段からは二乗に高くなって居るではないか。既に逓相の云うた値段でモウ出来て居るのである。・・・夫で俺が此の間から幾度も幾度も、屹度成立させて遣ると云うのである。併し、最早一度立派に出来ソコのうた事件であるから、手続きだけは、立派に、新たに遣り直さねばならぬから、・・・大秘密を要するから、公証役人を自宅に呼んで、極秘に契約書を作製せよ」
 と云付けて、トウトウ築地の梁山泊と云われた台華社の楼上に何やら鶏一とか云う公証人を呼んで、チャンと其の公正証書が出来た。ソコデ庵主は夫を状袋に入れて、固く封蝋を付けて桂総理の所に持って往って、曰く、

「閣下、此の書付けは、此(桂二次内閣)の大成功になるか成らぬに大関係のある、大事の書類であり升から、此封の儘、鍵のある所に入れて大事に御保存を願いたいです」
「一体是は何か?」
「好い時に私が言升から、先づ仕まって置いて下さい」
「ヨシヨシ」
 と、桂公は云うて、
 側の「ドル箱」に入れられた。夫から2ケ月ばかり経過する中に、桂内閣はドウしても第二次西園寺内閣に政府を引渡さねばならぬ事になって来た。庵主は日々其方で急がしかったが、弥弥(いよいよ)何でも明治41年の8月の20日位に辞表を出さねばならぬ事となった。其の時庵主は、桂公に向って、
「夫では、トウトウ此の内閣は格別の仕事もせずに、ザワザワ斗り(ばかり)で往生する訳となりましたネ、閣下は残念と思いませぬか」
「ドウも仕方がないからネー・・」
「此間お煩けした書類を、一寸出して御覧じませ」と云うと、桂公はモウ忘れて居たので、能く云うて夫を出させて、夫を能く桂公に見せて説明をして聞かせた。

「そもそも 此の電車市有の不成立は、満天下に大恐慌の大危機を胎んで居升、夫を成立させて、此毒気を一掃して西副寺侯に御渡しになるのは、全く閣下の義務である上に、現下の状況として閣下の大成功でござり升、・・・夫れ御覧じませ、電車側の交渉委員の云うた値段の金高は、○○○○○○○○円であり升。夫に後藤逓相から内交渉した買収値段の金高は○○○○○○○○円でムり升(ござります)、夫は三百万円斗りの差で、逓相の申出の方が安価であるから、此の経済界一大事の交渉が不成立になりました。然るに私が、斯く総株数の六割一分に相当する大株主の売る値段を取糾して見升と、其の金高が斯く○○○○○○○○円で売ると申し升。左すれば、逓相の云う値段よりも、更らに百万円余も低価でムい升。斯く元値と大差ある事を逓相が能く知って居升。夫故に此の事件は成立しても、後に屹度、不透明の悶着が起ると思うて居升から、譬え不成立になっても決して買収せぬのでムい升、其の上最近、農商務省にも斯る不適明に類似する問題が蟠って来て居升から、夫は内閣の安危に関する事と思うて、逓相が蔭になって夫を打こわして居る位でムい升から、自分の所管に関する此の電車問題に不透明の感じのある事は、決して成立させませぬ。故に今改めて是にある此の大株主が売ると云う値段で買収する事を、決して内交渉も何もせずに、公然と市長と会社に向って発表し、併せて之を株主共にも秘密にせず之を知らせます時は、此の大恐慌を孕んでいる恐ろしい問題でございますから、株主共が即時に売るに相違ムいませぬ。左すれば、長い間もつれにもつれた此の大困難の大問題が、一瞬間に片付まして、恐慌も何も根本から一掃して仕舞う事になり
升、サァ閣下、是を遣り升か、ドウです」
 と云うと、桂公は目をシパシパさせて其書類を見て居たが、

「杉山……此の書いた通りに、出来るかノウ」
「出来るか出来ぬか、夫は一千万円の損害賠償付の公正証書でムい升ぞえ」
「ソーすれば、此をドウすればよいのかノウ」
「夫は、閣下はモウ政府をお休めになる事が極りましたから、逓相に何も相談がましき事をなされずに、厳然として、政府は市街電車を○○○○○○○○円(此の株主共の申す価格)で買収する意思ある事を、市長に通知さするのでムい升。夫は閣下が総理として、逓相に対する絶対命令でなければイケませぬ」
「オイ杉山、ソンナ事を云うて良いかよ」
「大丈夫でムい升、・・・閣下は、★株式取引所、限月短縮事件の時、私の申上る通りになされましたら、アノ大問題が即時に片付いたではありませぬか。・・・決して間違も違算もムりませぬ、閣下が夫を直ぐに御実行にならねば、閣下の内閣に於ける百年の怨を残すのみならず、西園寺内閣も、直ぐに来る大恐慌で多分潰れると思い升。此は閣下の大成功と、一方は政治家としての最高の義務じやと思い升」
「大丈夫か?」
「大丈夫です」
「好し、直に後藤に云う事にする」
と云われて、★其の座で電話を掛けられて逓相・後藤を呼ばれた。

 ●後藤の寝ざめ

 夫から庵主は、後に桂公から聞いたが、桂公は逓相に向って、
「貴官は市長を呼んで『政府は市街電車を○○○○○○○○円で買収するの意思ある』と云う事を、今日中に電車会社に通達せられよと、云渡して呉れ給え」
 と云うと逓相は、
「閣下、電車買収の価格は、既に私が、先に其の委員に向って○○○○○○○○円で買収するの意思ある事を明言して居ますから、夫を更らに減額して、又云う事は出来ませぬ」
「イヤ夫は、既に不成立になった、過ぎ去った事件である。今回新たに、政府に左様の意思ある事を彼等に通達丈け仕給え」
「承われば承る程、変なお咄でムい升が、・・・閣下は何か、御精神に異状はムりませぬか・・・何か私の手落ちな事でもあっての事でござい升なら、私が辞表を捧呈する事は何でもございませぬが」
「イヤ、辞表の如何は貴官の自由である。・・・此は本官の命令である、速やかに市長に今日中に通達して貰いたい」
「イヤ、御命令とあれば通達致しましょう」
と云うて別れたそうじゃが、逓相は如何にしても総理の意思が分らぬので、トウトウ其の夜の9時頃、市長を呼出して其の事を通達した。
「貴下は今日中に、電車会社社長に、斯く斯くの事を御通達を願ぃたい」
 と云うと、市長は鳩が豆鉄砲でも食うたように、目をシコシコさせて、
「閣下のお詞ではムい升が、・・・閣下は何か、御精神に異状はムいませぬか」
「イヤ、精神に異状があると無いとは此方の事じゃ、貴下は速やかに通達さえせらるれば宜しい、・・・此は総理大臣の命令である」
 と云放ったので、市長はスゴスゴ引き下がって、仕方がないから電車会社の社長、千家尊福(たかとみ)男に其の通りを通達した。此の報知を深夜に庵主が聞いたから、直ぐに村上と小池を呼出し、

「お前達は、明日大株主を寄せて決議をして、《政府は昨夜、市街電車を○○○○○○○○円で買収する意思ある事を発表したそうじゃ。
大株主は、其の値段にて、直ぐに売るから、会計は早速、其の事に
同意をして貰いたい。若し不同意であれば、直ぐに臨時株主総会を要求して、其の事に決議をするから》と云う意味にて、示威運動を響かせてくれ」
 と云うと、両人は躍り上って、
「委細承知しました。・・・直ぐに会社に決行致させます・・・此まで遺って貰えば、モウ屹度出来ます」
 と云うて帰ったが、何所を何としたか知らぬが、其の翌日より事務はズンズン進捗して、見る間に此の市街電車占有が出来たのである。

 人は皆、考えねばならぬ事である。此の「コンミッション」と云う物は、好い物ではあろうが、此の「コンミッション」の為めに、官民共は腐敗もし、闘争もし、訴訟もし、罪人にもなり、入獄もし、国家の事務が停滞もし、破壊もする物である。故に、仮染にも家国民人の為めに働く者は、決して「コンミッション」は念慮に置く可からずと云う事を戒むる為めに書いて置くのである。国に尽くす名誉も得たい。君に忠なる美名も得たい、夫までは好いが、其の上に又、不法の金まで儲けては、直ぐに親から無難に貰うた此の腕に青縄が掛るか、満足な此の身体を牢獄の中に入れるかせねば済まぬ物である。其の時には名誉と美名とを表看板にした丈け、罪は永久に重いのである。後藤逓相が此の時読んだ歌がある。曰く、

 ●寝ざめよき、ことこそなさめ、難波江の、

  よしとあしとは、云うにまかせて

 此の後藤の生涯は、随分働きもした、国家の大事も沢山為したが、随分非難も多かった。
 併し庵主は、後藤の30台(ママ)から、一日の違変もなく交際して来た二人である故に、能く其表面も、其裏面も知って居る。世の人が何と云うても、此後藤は決して《寝ざめの悪るい》事をする人でないと云う事は、俺主が何所までも保証するのである。今日まで、彼を非難した人もマダ大分生存して居ると思うが、此の後藤の歌をよく玩昧すべしである。庵主は50年の在京、一度も他人の弁護をした事はないが、此の人を此まで世人が非難した事柄丈けは、屹度ソーでないと云う事を反駁して置くのである。

 ●電車市有問題  了。
 

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