カウンター 読書日記 ●『俗戦国策』 杉山茂丸 (3)
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●『俗戦国策』 杉山茂丸 (3)
 ●ー億三千万弗借款事件

 ★黄金王モルガンとの問答


 夫(それ)から予定の通り、米国貿易商会の社長「スチブン」氏の案内で各製造所を見て、庵主の頭に入るだけの視察と必要書類とを得て大抵要領を得、直ぐに加奈陀(カナダ)に入り、暫く「ヴァンクーバア」に船待をして其の地方を視察し、匆々に「インプレス・インデアン」号で帰朝し横浜に着いたのが其の年の11月の3日であったと思う、丁度横浜を出て153日目であった。

夫(それ)から金子子爵や由利子爵と相談を定め、今度は金子子爵の手紙を1本持って渡米したのは、その翌31年の3月1日であったと思う。          
金子子爵の手紙は、「ゼー・ピー・モウガン」商会の法律顧問たる「フレデリック・ゼニング」氏に宛たものであった。その文面は、

 「此の手紙を持って行く・・・は、子(金子)が同郷の友人であって、日本に於て最も進歩したる経済的要務を帯びて欧米を巡視する者である、子は貴下が米国に於て最善の指導を与えられん事を望む、云々」

 と云う様な事であったと思う。今度は横浜を「インプレス・チャイナ」号で「ヴァンクーバア」に向い、米国に着いてユックリした宿に泊り込み、方々の観光に出掛けて、一向、誰にも面会せぬのである、折柄金子子爵の手紙を受取った「ゼニング」氏が庵主の宿を訪問して来て、
 「貴下は何か経済上の要務を帯びて居られると金子氏の手紙で見たが、ソーですか」
 と云うから、
 「・・衷心より貴下の御来訪を感謝致します。金子氏の手紙にある如く、小生は或る経済上の視察をするのでありますが、米国はその旅行の途中の道程であります・・昨年参りまして、米国の各製造所は巡視しましたが、マダ少しも米国各地の様子も見ませんでしたから、今回は観光を主とする積りであります。昨日『ナイヤガラ』から帰って参りました」

 「ハア、そうですか、実は★金子氏からのお手紙でしたから・・丁度その頃『モウガン』氏にその別荘で会いましたから、東洋の経済問題の為、その人に1度会っては如何と申しましたら、氏は『来る水曜日に紐育に帰るから、その翌日の木曜日の午後2時頃、2~30分間位なら面会しても差支ない。併し沢山面会せねばならぬ人を断って居るから・・極秘密にして置いて貰いたい』・・・との事であったから、
幸いの機会であるから、君、お逢いになって置く方が良いと思い升(ます)が」
「夫は何ともお礼の申し様もない御厚意であり升・・世界各国の元首でさえ、此の国に来て『モウガン』氏に面会する事の困難な程の世界の黄金王でありますから、願うてもない事とは思い升が、小生は全く書生の観光旅人であって、何等日本政府の『オーソリチー』等も持って居らず、全く無責任の世間話位で『モウガン』氏に面会しては、第一敬意を欠く事になりますまいか」

 「夫は・・好き御注意ではあるが・・・私は既に貴下の事を話したら、面会すると時刻まで指示された位故、兎も角面会なさってはドウです」
 「誠に有がとう存じ升が・・・甚だ恐入ますが・・小生が全くの米国観光旅人で、何等官憲の命令も何も持って居らぬでも面会して下さるかドウかと、貴下より今一応『モウガン』氏にお尋ねを願いたいと思い升。夫が東洋人の礼儀とも敬意とも心得て居ますから」

 「貴下のお考えはよく解りました。夫では今度聞いて木曜日の朝までに御返事致します・・・「モウガン』氏は、自分の気が向くと思いも寄らぬ人に面会をします・・・此の間も突然費府(フィラデルフィア)の工学生の寄宿舎に行って、椅子も無しに講話をしました位ですから・・イヤ、屹度貴下に御面会すると私は思い升」 と云うて「ゼニング」氏は帰られた。夫から水曜日の午後の2時頃に「ゼニング」氏から、
 「明日の午後2時頃『モウガン』商会に来られよ」
 との事であった。その木曜日の1時頃「ゼニング」氏が庵主の宿の「フィフサベニュー・ホテル」に来られた。

「隙があったから迎いに来ました・・『モウガン』氏に貴下の趣旨を話ましたら『兎も角時間が明けてあるから面会する』と云われました」
 との事である。此の「ゼニング」氏と云う人は実に立派な紳士で、金子氏の手紙の為めでもあろうが何所まで親切な人であるか解らぬと思うた、夫から馬車を共にして「モウガン」商会に世界の黄金王モルガン氏を訪うた。チャンと部屋に待って居た、其の容貌は平面の顔で、頭は半白の髪が房々として、眼が鳶のように茶色の瞳子(ひとみ)から異様の光を放って居る、而して其の目元の愛嬌と云うたら、比類なしである、「ゼニング」氏は庵主と共に直立して居たら、

 「シットダウン・・・(坐せよ)」
 と云うて突然として「モウガン」氏が発する声は、最も底力のある威圧を感ずる簡明な物であった。
 「亜細亜大陸の開発は、ドウしたら好いと云う意見ですか」
 「開発を考える前に、大陸に充填する天産地産の豊富にして、夫が原始の儘封鎖せられて居る事を知らねばなりませぬ」
○「其の価値は」
 「世界無比に安価と思います」
 ○「ナゼ」
 「河川海洋の便によりて、国を狭小に区画する事を得る地形にあり升から、運輸の距離が甚だ近接になり升、故に豊富なる天産は世界無比に安価であり升」
○「日本民族の特長は」
 「情義に富んで、勤勉で忍耐にして、持操があります。その他悪い習慣も沢山ありますが、米国程ではありませぬ」
 ○「支那民族の特長は」
 「忍耐、勤勉ではありますが、人類の持操に乏しいように思います、故に威圧力善導の外、道がありませぬ・・・悪い習慣は米国以上であります」
 ○「開発の利益は何所で得られる」
 「米国の悪習慣は、理論的であり升から、仕方がありませぬ、支那の悪習慣は、無理論的であり升から、対症治療の威圧的善導で片付ます、何でも徹底的に片付かぬ事は結局損であるから、高価く(ママ)付きます、早く片付いた事は総て安価であり升」
 ○「夫(それ)では外国人は、威圧器械を特って開拓に行かねばならぬと云わるゝのか」
 「外国人が直接に亜細亜を開拓すると、世界無比に高価になり升、其の開拓を全部日本に嘱託するが一番宜いです。日本は距離が近くて、威圧器械も具備して居升(おります)」
 ○「嘱託を受ける程の信用が日本に有りますか」
 「日本は政治上の内乱と経済上の恐慌は折々来ますが、50年の長年月、外国の負債取引支払い元利共一度も信用を怠った事はありませぬ」
 ○「日本民族が世界の代表者となって、亜細亜開拓を嘱託せらるる資格は如何」

 「日本は東西両洋の文明を理解し、其の負うたる責任を果たさざる事は今日まで一度もありませぬ」
 ○「開拓の資本は誰が供給する」
 「夫は小生にお尋ねにならずとも、賢明な貴下がよく御存じと思い升・・屹度米国が貸すのです、夫は東洋の為めでなく、米国自己の為です・・・米国は世界黄金の実権を把握して居り升(ます)、鉄と小麦粉と唐もろこし(コーン)だけでも、モウ欧羅巴には売れませぬ、東洋を開柘して夫に黄金と鉄と麦粉と唐もろこしだけでも売る場所としなければ、世界坤與の上に、モウ売る場所がござりませぬ。夫を実現する方針を定める責任は、日本でも米国でもありませぬ、全部貴下御一人のお考にある事は、世界の何人に問うも異議はござりませぬ」

 ○「ドンナ方法で開拓費の『インベスト』をする積りですか」
 「絶対に米国が損をせぬ方法が基礎です」
 ○「政府が引受けるのですか」
 「日本の政府は、商売人ではございませぬ、商売を保護する者であります」
 ○「夫では資本引受会社を拵えて、政府は『セコンド・ギャランチー』をするのですか」
 「夫で結構と思います」
 ○「夫を日本政府は為し得ますか」
 「為せたら為るであろうと思い升」
 ○「夫では支那の事は後にして、先ず日本自己の開拓をする事を政府が保護して後に、支那の事に及ぶの外あるまい・・・日本だけで幾千(いくら)の資本を要する見込ですか」
「解りませぬが・・・先ず1億位から始めるが適当かと思い升(何だか此の時1億円と云う事を云わなかった・・・『モウガン』氏は夫を1億弗(ドル)と思うたと見える)」
 ○「それでは案は直ぐに立つと思う、先ず、

(1)工業開発会社を起し、其の会社が債券を発行するのに、政府が第二の保証をする事
(2)その金額は1億弗以上1億3千万弗位を限度とする事
(3)年限は50年位とする事
(4)利子は五朱以上に貸付けてはイケない、利息が高いと事業利益が少なくなるから、資本の需要が 多くならないから
(5)利息は必ず3歩5厘として、その会社が1歩5厘を取ったらよいと思う。」
 
 「ソンナ事で、貴下が尽力せらるゝ事を拙者は承認し升」
 「誠に結構な御指導です・・・小生は今お話の事を『メモウ』(覚書)に書いて戴きたいと思い升」
 と云うと「モウガン」氏は暫く沈黙して居たが、庵主も「ゼニング」氏も驚く程の大声を発して
「モウガン」氏が、
 「『ゼー・ピー・モウガン』が承認(エース)ですぞ」
 と云うと共に、非常に昂奮して「テーブル」の端をドンと叩いたので「ゼニング」氏も庵主も通弁も度肝を抜かれて、顔色がサッと変わった。・・・庵主は徐に云うた。
 「今一度テーブルを叩いて戴きたいと思いますが」
 と云うと「モウガン」氏は緊張した声で、
 「ナゼ (ホワイ)」
 と云うから、
 「今一度テーブルを叩いて戴いたら、その音響が日本まで聞えはせぬかと思い升・・・小生は先日『ゼニング』氏を以て敬意を表しました通り、米国観光の一旅人でござり升、何等政府の命令も、国民の依頼も、受けて居ませぬ、併し貴下に拝顔の光栄を得る事を許されたから、恐る恐る伺候して御高諭を蒙った訳であり升、其のお話は実に日米両国の為めに、重大なる事件と思い升から、欧州行を中止しまして、明日にも帰国仕ようかと思うて居る所であり升、大には世界黄金界の大権力者たる『ゼー・ピー・モウガン』氏の、東洋に対する大なる親切の声か音かを、日本の政府及国民に聞かせたいと思い升許りであり升、小生は貴下の承認を信ずるの信ぜぬのと云うような資格のある男でない事は始めから、念を入れて申上げて置きました筈であり升、貴下が『テーブル』を打たるる音よりも、アノ美人の手にある『タイプライター』の音の方が便利ではないかと思うて願うたのでござい升」
 と云うと、暫く又沈黙して居たが、
 「エス・オーライ(承知しました)」
 と云うて、側の「タイピスト」の女にペロペロと云うた、其文書をサアッと取上げて一目してスラスラと「サイン」をして庵主に渡したのが、即ち明治31年の伊藤総理大臣と井上大蔵大臣に手渡した夫(それ)が、彼の日本興業銀行計画の基礎である。夫を伊藤公と井上候が実行すると受合って置いて、時の日本銀行総裁・岩崎弥之助氏及び重役の鶴原定吉氏が本となって反対したから、全東京の高利貸銀行の全部が反対し、「ソンナ安い金を貸されては、全銀行は上ったりじゃ、反対せよ反対せよ」と云うて、一致協合して此の案叩き潰しの大騒ぎを始めたから、金子子爵、由利子爵等、その他幾多の巨姓大名の人々が、是非とも此の低利永年賦の工業資本を輸入しようと提唱せられて、其年の議会の下院を通過せしめたが、上院では之を潰した。

 其の次の大隈内閣が不得要領であって、其の次の31年11月に成立した山県内閣で、山県総理大臣が、之を中心として危くも上下両院を通過させて呉れて日本興業銀行が出来たので、ヤット金子、由利両子爵の顔は立ったが、日本中の銀行屋や金持方が、安い利で貸されては、抵当は取上げられる、高利貸は出来ぬ事になるので、捻じてもコジても連合して、此の外資を入るゝ事を阻止して、トウトウ「モウガン」氏との契約を揉み潰して、やはり興業銀行を日本普通の高利貸銀行となして仕舞うたのである。

★黄金王モルガンとの問答  完。
 

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