カウンター 読書日記 ●『俗戦国策』 杉山茂丸(1)
読書日記
日々の読書記録と雑感
プロフィール

ひろもと

Author:ひろもと

私の率直な読書感想とデータです。
批判大歓迎です!
☞★競馬予想
GⅠを主に予想していますが、
ただ今開店休業中です。
  



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する



スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


●『俗戦国策』 杉山茂丸(1)
                        俗戦国策_1
 


 ★80年前の記憶ぐらいは伝えていきたいものだ。

 1929(昭和4)年、「大恐慌」の年。

 次のような文章で始まる本が出版された。著者は杉山茂丸(夢野久作の父親)。

 悪しき歴史の繰り返しは「茶番劇」だと読んだが、如何。

 以下、『俗戦国策』 (杉山茂丸 原:1929(昭和4)年 講談社刊
 2006.4.30 「書肆心水」刊)より。  

 *************

 ・・この書は、青年の為めに書くのである。

 今の青年は、就学難と戦うて、夫(それ)だけで終る者もある。又、父兄も子弟の就学を以て、父兄たる義務が了えたかのように心得て居る者もある。又、千辛万苦して、ヤット得た免状は、其の父兄子弟共、衣食の通券でも得たかの心地をして大安堵をなす者もある。
 
 夫から又、就職難に入るのであるが、此の就職難と云う戦争で、大概は戦死者となるのである。

 夫から偶々就職して勝利者となったものは、此の多くの戦場の勇者であるようじゃが、一方、人間精神上の論功行賞から云えば、全部敗北者許り(ばかり)である。其の全身に充満する物は恐怖と杞憂許りで、天下国家は申すに及ばず、社会民衆の上に往来する、人類一人前の思想さえ維持するの力もなく、此の貴重の生涯を、又、生活難と云う戦場で、殆んど悉く全部敗北者となるのである。

 それではこの勝利者、成功者は、飯を喰うて、生きられる丈け生きて居たに過ぎぬ。他の動物と少しも選ぶ事の出来ぬ者許りとなるのである。斯る敗北者に限りて、勇気と云う者が少しも無い、為めに自己の生存以外に、智力も体力も、一切の活動が停止されるのである。
 随って自己以外、他に及ぼす力が無いのみならず、自己を制する勇気さえ全部消耗して仕舞うのである。

 人間、自己の慾望をさえ制する力がなくなるのであるから、真に獣類と少しの差もない事になるのである。

 ★社会を乱す者

 自分さえ喰えば他は餓死しても構わぬ。夫が亢進して他の食を奪うて喰う事になる。自己さえ着れば他は凍えても構わぬ。夫が亢進して他を剥いで着る事になる。
 斯くの如くなる時は、自分許り大厦高楼に住居し、自分許り錦衣玉食をなし、自分許り嗜好三昧を充たして、之を抑制するの能力を失い、他は飢寒凍たい、流離困頓するも、之に同情するの意識を亡失するのである。

 而して一たび時勢の非運に遭遇して、以上の慾望に欠陥を生ずる事になって来ると、秋毫も自己の行為を選択するの知識を失い、只だ見聞に随って、把掴掠奪しても此怨望を充たさんとするのである。

此場合を号して、生活難末期の戦場とするのである。元々此戦闘には、人類最大の貴重物たる恥辱観念と礼譲の意識とを失うた動物性となって居るから、取る事の出来ぬ物を取り、喰う事の出来ぬ物まで喰うのである。故に高貴の保管物でも侵し、松島遊廓の頭でも噛るのである。終に社会的位置を失墜する事になると、茲に昔日学び得た学問を悪的にアップライドして群衆心理を説き、社会問題を高唱するのである。曰く政治の圧制、富豪の暴横を喧言して、ストライキ、サボタージを煽動するのである。其上品な議論が、ヤレ天下の人心が悪化して来た、ヤレ人類の道義心が腐敗して来たと云う。

 一体何のたわ言を云うのであるか。世界の歴史を通じて、国家の興亡は、殆んど全部其の上流社会の腐敗如何にあるのである。民族や社会が全部腐敗して、国家を亡ぼした事は殆んどないのである。

 日本に於ても藤原氏腐敗の極に達して平氏興り、平氏21年の栄華に腐敗して源氏興り、源氏の非政三世に腐敗して北条興り、北条九世は舞楽闘犬の極まで腐敗して足利興り、足利腐敗十三世にして徳川興り、徳川腐敗十五世にして藩閥政府興り、藩闘の腐敗40年にして政党政治興り、政党の腐敗10年を出ずして、正に今、禽獣社会を現出せんとするのである。

支那5千年の歴史は、聖人政治が三世位から腐敗を始めて、易姓の政治が興る事を繰り返して居る。
仏国はルイ16世にして、腐敗の極に達して革命が興り、伊大利の亡ぶるや、何時でも羅馬の腐敗が前提ならざる事はないのである。

 今の日本は、政治の最上位の腐敗から、貴衆両院と富豪の腐敗が爛熟して来て、今日の危殆に瀕して居るのである。此の純良な国民の何処に腐敗があるか、其証拠は驚くなかれ無慮20億円の租税を、お上の御用と云うて正直に納めて居るではないか。斯の如く純正無比の国民に向って、人類腐敗の先登者ともいうべき上流種族が、人心悪化だの道義心の腐敗だのと云い得るのか、故に庵主は高唱す。

 国家の腐敗は何時でも上から先に腐って、下に及ぼす物である。日本では最下層まで腐りの透った事は一度もない。故に聖者、賢者、正義者の起こる時は、何時でも国民が決起する。その度毎に国家は善良に回復するのである。
 是を我国は3千年繰返して居る。現在に於ても、日本は上が腐って居る丈けで、下は決して腐って居らぬ。其証拠は、20億円に近い租税を納入して、昔ながらの家庭を守り、勤労して居るではないか。

●人道の自覚者

此に於て庵主は、青年達に向って云う。

 「能率なき学問に中毒して、能率なき行為をしてはならぬ。学問は前途に進歩発見を見越して居る全くの未製品である。正に以て人間が使用すべき物の一つが学問である。夫に人間が使われて溜るものでない」と。人道と云う者は、簡単明瞭な物である。

 「智者は愚者を導き、強者は弱者を助け、富者は貧者を賑わす」、僅かに此三つで足りるのである。
 然るに現世界に於ける学問中毒の大勢は、総て是が反対である。
 「智者は愚者を欺き、強者は弱者を凌ぎ、富者は貧者を虐げる」

これでは決して永続きするものではないと云う事を早く知った者が人道の自覚者で、直ちに勝利者となるのである。

庵主生れて64歳、17歳より輦穀下(れんこく)に居住し、言いたい三昧を云い、為たい三昧を為して茲に48ケ年、未だ一度も警察署と裁判所の御厄介になった事がない。未だ一度も松島事件や山林事件で手を縛られた事がない。未だ一度も会社の発起人と株主と重役と、役人と商人とになった事がない。そうして、此の聖天子治下の一民として一日も休止する事なく、只働いて、又、昭和3年の春を迎えんとするのは、抑も如何なる妙術があっての事であろう。

 或る時、庵主と同年の友人、亀井英三郎と云う警視総監が、専門の警官に命じて、庵主の裡面の生活を偵察した報告を見た事がある。曰く、
 「杉山茂丸、生活の裡面は、ドウしても解りませぬ、・・・併し、恐るべき犯罪が、永久的本人の心裡に潜んで居る事丈は、事実と思い升・・」
と、
総監曰く、
 「此報告を見給え、君はドウしても、一度は縛られるぞえ」
 「ムウ、夫は僕が17歳から覚悟し待って居るけれども、当局無能にして、マダー度も僕を縛らぬ、・・僕も同年の君と云う友人に縛らるれば、此上の本望はない。何時でも縛ってくれ、夫が年貢上げと思うて、僕の生存を諦めるから」
 と云うて居たが、亀井はモウ疾に死んで仕舞うて、其後の警察官は矢張り無能な役人ばかりで、庵主が64歳の今日まで一度も僕を縛りに来ぬ。

 ★庵主64年の秘策

 併しモウ庵主も何時死ぬか解らぬから、64年秘密にして居た処世の大秘事を、庵主の一番愛好する又、信頼する青年諸生に知らせて、此の庵主生存の謎を披露して置きたいと思う。

 先ず庵主が48年間、帝都に住居して、太平楽を為し通して生存した秘事は、コウである。
 「親切を以て我が本領とする事、其親切には差別がない事」、眼中素より、尊卑なく、強弱なく、貧富なく、貴賤なく、長幼なく、老若がない。而して夫が庵主の力を限度として、善悪がない。而して夫が何時も可能性なるべき事である。故に夫れの副産物として多くの青年が育った。夫が日本の本土内から朝鮮、満洲、シベリア、支那、南洋から英、米の諸州に散在して居る。

 其教育の本領は、「人間の最終目的は独立であるぞ、下駄の歯入をしても、紙屑を拾うても、独立をしたら、予は紳士の待遇をして汝等と交際する。依頼心は自殺以上の罪悪であるぞ、野犬でさえ、掃溜を漁って天寿を保って居る。汝等は野犬に劣ってはならぬぞ。夫は親に貰うた自己の全能を以て働く事と、予が教えを守る事であるぞ。人間は、大自然の創造に係る、宇宙間の善智善能(ママ)を以て結晶した最上無比の大宝器である。夫を理解せずして、其生存を粗末に取扱う者は、予の門下に居る事は出来ぬぞ」、と是丈けである。

・・・続く。
 

スポンサーサイト


この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバックURL
→http://2006530.blog69.fc2.com/tb.php/432-d62fa174



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。