カウンター 読書日記  『新しい階級社会、階級闘争』を読む。
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 『新しい階級社会、階級闘争』を読む。
 3、若者の中に形成されつつある巨大な貧困層

 
 若者の内部の格差が急速に拡大している。この格差拡大とともに、若者の中に巨大な貧困層が形成されつつある。その中心は、もちろんフリーターたちである。
フリーターという言葉が生まれたのは1987年で、生みの親はリクルート社のアルバイト情報誌「フロム・エー」の編集長だった道下裕史である。道下によると、この言葉には「人生を真剣に考えているからこそ就職しない」「夢の実現のために自由な時間を確保しようと、定職に就かずに頑張っている人」という意味が込められていて、「フロム・エー」の大事な読者層でもある彼らを応援したかったのだという(道下裕史「フリーター生みの親が語る」「Works」65号)。
 
 リクルートは、東宝東和に協力して『フリーター』(横山博人監督:1987年)という映画まで制作している。金山一彦、鷲尾いさ子、羽賀研二などが出演。映画のPRのキャッチフレーズは「近頃、社会を自由型で泳ぐ奴らがいる」「バイトも完全就職も超えたいま一番新しい究極の仕事人・フリーター」というもので、若者たちがフリーターとしていろいろな経験を積んだ後、新しい発想でビジネスを始めるというストーリーだった。
現在のフリーターとはイメージが違うが、厚生労働省の推計によれば、当時のフリーター人口はわずか79万人。バブル経済が本格化するころで、希望すれば正社員として採用されるのはさほど難しくなかったはずだから、あえてフリーターを選んだ若者たちも多かったのだろう。

 しかしフリーターの実態はその後、急速に変わっていく。道下も認めているが、それは「企業に正社員として就職できなかったため、バイトや派遣といった雇用形態を余儀なくされている人」へと変質していくのである。実のところ、ある時期までは「フリーターは束縛されたくない若者たちが好きでやっている」というイメージが強く、フリーターの増加がなかなか社会問題として認知されなかった。
 このイメージを大きく修正させたのは、2003年の『国民生活白書』(内閣府)である。『国民生活白書』は2005年にもフリーター問題を取り上げているが、これらによると、現在フリーターである若者のうち、72.2%までがもともと正社員希望であり、パート・アルバイトを希望していたのはわずか14.9%にすぎない。とくに男性では、パート・アルバイト希望は8.0%で、ほとんど例外に近い(女性では19.9%)。フリーターは若者たちにとって積極的に選んでとる道ではなく、あくまでも不本意な選択なのである。

 非正規労働者として働くフリーターたちの賃金は、きわめて低い。勤続年数が長くなれば多少は賃金が上昇する可能性もあるが、それも30歳代には頭打ちとなり、生涯賃金は男性が約6500万円、女性が約5000万円で、正社員の27%程度にすぎない(UFJ総合研究所「増加する中高年フリーター」)。雇用も不安定で、失業するリスクも大きい。現実に第一章で見たように、その一部はホームレス化しつつある。
さらに見逃せないのは、フリーターは出身階層の上でも下層的性格が強いということである。教育社会学者の耳塚寛明らか二I校の都立高校を対象に調査したところによれば、高校卒業後にフリーターとなった生徒の比率を家庭の類型別に見ると、ホワイトカラー世帯出身者では14.4%であるのに対し、ブルーカラー世帯出身者では31.3%。しかも両者の差は、年とともに大きくなり、格差が拡大傾向にあるという(耳塚寛明「誰がフリーターになるのかー社会階層的背景の検討」、小杉礼子編『自由の代償―フリーター』所収)。
なぜ、こうなるのか。最大の原因は、低所得世帯の子どもたちには、大学進学という逃げ道がないことである。就職難の中、多くの高校生は「やりたい仕事の求人がなかった」「就職試験に受からなかった」という理由で就職から進学へと進路を変更している。こうした現状を追認するかのように、高校の教員たちも、就職が決まらない生徒に進学を勧める傾向があるという(安田雪『働きたいのに・・・高校生就職難の社会構造』)。
 ところが低所得世帯の子どもたちには、このような逃げ道がない。少子化によって大学定員には余裕が出てきているから、学力の壁はだいぶ低くなっている。一部の受験産業では「Fランク」などという言葉も使われているが、試験を受けさえすれば合格可能な大学も出てきている。
 しかし、入学して教育を受けるためには学費を払わなければならない。自宅の近くに適当な大学があるとは限らないから、住居費や生活費の負担も大きい。だから大学に進学できるかどうかは、生まれた家庭の豊かさによって大きく左右される。実際、大学進学率を父親の職業別に見ると、経営者・役員の場合で52.0%、管理職・専門職などホワイトカラーの場合で、45.7%に上るのに対し、販売・サービスやブルーカラーでは17.1%、自営業者でも26.4%にすぎない(JGSS調査データから算出。「あとがき」参照)。こうした差は、成績の同じ程度の若者たちどうしで比べても、基本的には変わらない。
 
 学費の安い国立大学があるではないか、という人もいるかもしれないが、いまでは国立大学もかなりの学費を取るし、自宅から通学できる場所に国立大学があるとも限らない。しかも国立大学は、私立大学に比べると入試難易度が高いことが多く、かなり成績のいい若者たちしか受け入れていない。だから成績が人並みかそれ以下の若者は、家が豊かなら私立大学に進学できるが、貧しければ就職先を探すしかない。そして高卒就職難の中で、就職とは多くの場合フリーターになることを意味するのである。
こうした下層的性格は、「ニート」と呼ばれることも多い若年無業者にも共通している。内閣府の研究会の分析によると、若年無業者のいる世帯には高所得世帯が少なく、低所得世帯が多い(内閣府「若年無業者に関する調査」。「ニート」というと、「やる気のない若者」というイメージとともに、「家が豊かで働く必要がない」という偏った見方がされることが少なくないが、これは明らかに事実に反するのである。

 2007年初め、政府はフリーターの数が1年前より14万人減って187万人になったと発表した。これは★明らかなまやかしであり、「フリーター隠し」に他ならない。そもそも政府は、派遣労働者をフリーターに含めていないからである。
現在、非正規労働者の中で最も増加しているのは派遣労働者だ。その数は2005年の段階で255万人。1年前に比べて30万人近くも増え、その賃金は大幅に低下している(厚生労働省「労働者派遣事業報告書」)。かつては専門性の高い分野に限定されていた派遣労働が、原則自由化されたからである。若者たちでは、非正規労働の主流がアルバイトから派遣に移りつつある。派遣など非正規労働者をすべて含めれば、フリーターの数は一貫して増加しているのだ。

 それだけではない。政府のいうフリーターには、正社員を希望する失業者や求職者が含まれていない。これらの若者だって、生活に困ればアルバイトもするから、事実上フリーターとはっきりした違いはない。若年無業者だって、その多くは働いた経験があるか、条件が整えば働く意志をもっている。これらを含めると、どれくらいの数になるか。私の推計では550万人で、在学者と既婚女性を除く35歳未満の若者の28.7%に上っている(詳しくは拙著『階級社会一現代日本の格差を問う』参照)。

 同じ政府でも、内閣府はかつて、派遣労働者や求戦中の若者たちをフリーターに含めて417万人とする推計結果を公表していた。しかしこの数字は、最近ではあまり使われなくなっている。
 しかも重要なことに、これらの若者たちも毎年、年をとっていく。★政府の定義ではフリーターは34歳までだから、35歳になると統計から消えてしまうのである。現実にはフリーターは、その境遇から抜け出せないままに次第に年をとって中高年化し、他方では新しく学校を卒業したり退学したりした若者たちがここに含流して、毎年拡大を続けていく。
政府は「再チャレンジ」などというが、現実にはきわめて困難であることについては前章で述べた。
 もうひとつ重要なことは、これらの若者たちが結婚することも子どもを生み育てることも難しい状況におかれているということである。
慶應義塾大学の研究グループの調査によると、25~29歳の独身フリーターのうち5年後に結婚していたのは、男性で28.2%、女性で38.0%だった。正社員ではそれぞれ48.3%、46.6%だったから、フリーターの結婚率は男性で正社員の6割弱、  女性でも約8割である(酒井正・樋口美雄「フリーターのその後一就業・所得・結婚・出
産」)。これとは別の厚生労働省の調査では、3年前に独身だった非正社員男性のうち、これまでに結婚したのは6.3%。正社員は15.2%だから、約4割にすぎない(厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」)。

 たとえ結婚できたとしても、子どもを生み育てることは難しい。年収400万円未満の世帯では、子どものいない世帯の比率が20.7%で、これは年収400万以上の世帯の約2倍である(内閣府『国民生活白書』2005年)。
これらの若者たちは、格差拡大の最大の犠牲者だといっていい。たまたま学校を出たころ、企業が正規雇用を縮小させていて、安定した職に就く機会を奪われた。やむなくアルバイトで食いつないでいると、キャリアがないとみなされて中途採用の機会も奪われた。収入が少ないので、結婚することも、子どもを生み育てることも難しい。仮に子どもを生み育てるとしても、教育費の負担は難しいだろう。こうして彼/彼女らの多くは子孫を残すことがないし、また残したとしてもその貧困が、次の世代に持ち越されていく。そんな巨大な貧困層が、日本の社会に形成されつつあるのである。
 


 4。単身女性ワーキングプアの激増 へ続く。


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