カウンター 読書日記 『生物と無生物のあいだ』・福岡伸一
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『生物と無生物のあいだ』・福岡伸一
 ●『生物と無生物のあいだ』 (福岡伸一著 講談社、現代新書 2007.5.20) 
 
 ★詩人であり、教え方の上手な先生であり、なにより人をそらせない語り口が素晴らしい。
  あの、五木寛之は子供のころ、「紙芝居」のおじさんの名調子に聞きほれながら、
  「ああ、いい商売だなあ」と思ったという。

 話好きな人が必ずしも話し上手だとは限らないのは、我々の日常よく経験することであるが、この二人 は「語る」対象・目的こそ違っても、ともに名人芸に近い。科学者「語り部」の登場というと失礼か。
 

 ***************
 
 ●プロローグ はこう始まる。

「・・・生命とは何か? それは自己複製を行うシステムである。二十世紀の生命科学が到達したひとつの答えがこれだった。1953年、科学専門誌『ネイチャー』にわずか千語(1ぺージあまり)の論文が掲載された。そこには、DNAが、互いに逆方向に結びついた2本のリボンからなっているとのモデルが提出されていた。生命の神秘は二重ラセンをとっている。多くの人々が、この天啓を目の当たりにしたと同時にその正当性を信じた理由は、構造のゆるぎない美しさにあった。しかしさらに重要なことは、構造がその機能をも明示していたことだった。論文の若き共同執筆者ジエームズ・ワトソンとフランシス・クリックは最後にさりげなく述べていた。この対構造が直ちに自己複製機構を示唆することに私たちは気がついていないわけではない、と。

 DNAの二重ラセンは、互いに他を写した対構造をしている。そして二重ラセンが解けるとちょうどポジとネガの関係となる。ポジを元に新しいネガが作られ、元のネガから新しいポジが作られると、そこには2組の新しいDNA二重ラセンが誕生する。ポジあるいはネガとしてラセン状のフィルムに書き込まれている暗号、これがとりもなおさず遺伝子情報である。これが生命の“自己複製”システムであり、新たな生命が誕生するとき、あるいは細胞が分裂するとき、情報が伝達される仕組みの根幹をなしている。
 
 DNA構造の解明は、分子生物学時代の幕を切って落とした。DNA上の暗号が、細脳内のミクロな部品の規格情報であること、それがどのように読み出されるのかが次々と解明されていった。1980年代に入ると、DNA自体をいわば極小の外科手術によって切り貼りして情報を書き換える方法、つまり遺伝子操作技術が誕生し分子生物学の黄金期が到来した。もともとは野原に昆虫を追い、水辺に魚を捕らえることに夢中で、ファーブルや今西錦司のようなナチュラリストを夢見ていた私も、時代の熱に逆らうことはできなかった。いやおうなく、いや、むしろ進んでミクロな分子の世界に突き進んでいった。そこにこそ生命の鍵があると。
 
 分子生物学的な生命観に立つと、生命体とはミクロなパーツからなる精巧なプラモデル、すなわち分子機械に過ぎないといえる。デカルトが考えた機械的生命観の究極的な姿である。生命体が分子機械であるならば、それを巧みに操作することによって生命体を作り変え、“改良”することも可能だろう。たとえすぐにそこまでの応用に到達できなくともたとえば分子機械の部品をひとつだけ動かないようにして、そのとき生命体にどのような異常が起きるかを観察すれば、部品の役割をいい当てることができるだろう。つまり生命の仕組みを分子のレベルで解析することができるはずである。このような考え方に立って、遺伝子改変動物が作成されることになった。“ノックアウト”マウスである。
 
 私は膵臓のある部品に興味を持っていた。膵臓は消化酵素を作ったり、インシュリンを分泌して血糖値をコントロールしたりする重要な臓器である。この部品はおそらくその存在場所や存在量から考えて、重要な細胞プロセスに関わっているに違いない。そこで、私は遺伝子操作技術を駆使して、この部品の情報だけをDNAから切り取って、この部品が欠損したマウスを作った。ひとつの部品情報が叩き壊されているマウス(ノックアウト・マウス)である。このマウスを育ててどのような変化が起こっているのかを調べれば、部品の役割が判明する。マウスは消化酵素がうまく作れなくなって、栄養失調になるかもしれない。あるいはインシュリン分泌に異常が起こって糖尿病を発症するかもしれない。
 長い時間とたくさんの研究資金を投入して、私たちはこのようなマウスの受精卵を作り出した。それを仮母の子宮に入れて子供が誕生するのを待った。母マウスは無事に出産した。赤ちゃんマウスはこのあと一体どのような変化を来たすであろうか、私たちは固唾を呑んで観察を続けた。子マウスはすくすくと成長した。そしておとなのマウスになった。なにごとも起こらなかった。栄養失調にも糖尿病にもなっていない。血液が調べられ、顕微鏡写真がとられ、おりとあらゆる精密検査が行われた。どこにもとりたてて異常も変化もない。私たちは困惑した。一体これはどういうことなのか。
 
 実は、私たちと同じような期待をこめて全世界で、さまざまな部品のノックアウトマウス作成が試みられ、そして私たちと同じような困惑あるいは落胆に見舞われるケースは少なくない。予測と違って特別な異常が起きなければ研究発表もできないし、論文も書けないので正確な研究実例は顕在化しにくい。が、その数はかなり多いのではないだろうか。
 私も最初は落胆した。もちろん今でも半ば落胆している。しかしもう半分の気持ちでは、実は、ここに生命の本質があるのではないか、そのようにも考えてみられるようになってきたのである。
 
 遺伝子ノックアウト技術によって、パーツを一種類、ピースをひとつ、完全に取り除いても、何らかの方法でその欠落が埋められ、バックアップが働き、全体が組みあがってみると何ら機能不全がない。生命というあり方には、パーツが張り合わされて作られるプラモデルのようなアナロジーでは説明不可能な重要な特性が存在している。ここには何か別のダイナミズムが存在している。私たちがこの世界を見て、そこに生物と無生物とを識別できるのは、そのダイナミズムを感得しているからではないだろうか。では、その“動的なもの″とは一体なんだろうか。
 
 私は1人のユダヤ人科学者を思い出す。彼は、DNA構造の発見を知ることなく自ら命を絶ってこの世を去った。その名をルドルフ・シェーンハイマーという。彼は、生命が「動的な平衡状態」にあることを最初に示した科学者だった。私たちが食べた分子は、瞬く間に全身に散らばり、一時、緩くそこにとどまり、次の瞬開には身体から技け出て行くことを証明した。つまり私たち生命体の身体はプラモデルのような静的なパーツから成り立っている分子機械ではなく、パーツ自体のダイナミックな流れの中に成り立っている。
 私は先ごろ、シェーンハイマーの発見を手がかりに、私たちが食べ続けることの意味と生命のあり方を、狂牛病禍が問いかけた問題と対置しながら論考してみた(『もう牛を食べても安心か』文春新書、2004年)。この「動的平衡」論をもとに、生物を無生物から区別するものは何かを、私たちの生命観の変遷とともに考察したのが本書である。私の内部では、これが大学初年度に問われた問い、すなわち生命とは何か、への接近でもある。(●プロローグ 完)

  <続く>。 

 
  * 以下はご参考までに。
 
 <福岡伸一研究室>
  http://www.chem.aoyama.ac.jp/fukuokalab/

  http://www.chem.aoyama.ac.jp/fukuokalab/link/seibutsu.htm
 ★講談社現代新書から『生物と無生物のあいだ』という本を出版いたしました。

 これはわたくしが、なぜ、生命という現象に興味を持つに至ったのか内省的に振り返りつつ、あまねく世界に浸透している機械論的な生命観(この考え方が、狂牛病問題や遺伝子組み換え、臓器移植を是とする通奏低音となっているわけですが)の由来と成り立ちをいま一度、批判的にあとづけたものです。その上で、動的平衡論に基づく有機的な生命観という、古くて新しいパラダイムのルネサンス(復興)を論じたものです。
 現時点でわたくしが考えるところの”生命とは何か”について、可能な限りのベストを尽くして書きました。

 **************

 ★市民のための環境学ガイド
  http://www.yasuienv.net/
 このホームページは、最近の環境問題を取り上げ、環境問題をいかに正しく理解するか、についてなるべく簡単に解説を行います。
 環境を考える基本思想から解説し、例題として、リサイクル問題、ごみ焼却問題、などを順次考えます。
 自己紹介も、また、ご意見をいただくページもあります。市民が正しく環境問題を理解することが、解決への唯一の道です。
 *本ホームページは個人(1名)によって運営されております。所属機関や研究プロジェクトとしての公式見解では有りません。(安井至)
 
 

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