カウンター 読書日記 『ワーキングプアー』(1)
読書日記
日々の読書記録と雑感
プロフィール

ひろもと

Author:ひろもと

私の率直な読書感想とデータです。
批判大歓迎です!
☞★競馬予想
GⅠを主に予想していますが、
ただ今開店休業中です。
  



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する



スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


『ワーキングプアー』(1)
★取材に動いた記者たちのきっかけは、日々事件報道に携わる警視庁記者クラブの記者たちが取材の過程で抱いた疑問だったという。

 日本社会の奥底で何か大きな地殻変動がおきているのではないか、という疑問。

 そんな疑問を抱いていた時に、番組の企画が持ち上がり、記者たちは全国各地をかけまわることになる。

放映日時は、以下の通り。
●NHKスペシャル
『ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~』
 (2006年7月23日放送)
●NHKスペシャル
『ワーキングプアⅡ~努力すれば抜け出せますか~』
 (2006年12月10日放送)

これから紹介するのは、以下のドキュメント=本からです。

★『ワーキングプア 日本を蝕む病』
  NHK取材班 ポプラ社刊 2007.6.11 1200円(税別)
 *************
 

 ●はじめに

 NHKスペシャル『ワーキングプア』は、東京・渋谷にある居酒屋で、仕事を終えたスタッフの議論からスタートした。
 その日、報道局の番組部長(当時)とプロデューサー、そしてこの番組の中核を担うことになったディレクターたちが集まり、安酒とつまみをつつきながら、話し合いが続いていた。
 「今日本で盛んに語られる『格差』とはなんなのか?」
 「仕事、労働の現場で何か起きているのか?」
 私たちは、議論や討論をする番組ではなく、現実に今日本で起きていることを、きちんと映像で記録し、人々に報告する番組を創りたいと話し合っていた。
 その席で、各地を取材してきたディレクターの言葉は熱を帯び、まだ断片的ではあったが、内容は「衝撃的」であった。「都会で仕事を求めて彷徨う若者の姿」「地方の農村で必死に働く人々の姿」・・・。
 私は、思わず彼らに尋ねた,
「それ本当かよ? 本当だったらなぜそんな『すごいこと』が、今まで伝えられていないんだよ?」
 しかし、後に番組の取材が進むにつれ、私は自分の不明を恥じていくことになる。
 確かに、「すごいこと」が日本で起きていて、それが[きちんと伝えられていなかった]、だけなのである。
 日本各地で、「豊かさ」のそのすぐ「隣」に、「新たな貧困」が生まれ、深く進行していた。
 どんな番組ができるのか、当初はまったくわからなかったが、酒席での話し合いの翌日から、取材チームは動き出した。さらに、犯罪・教育などの取材現場から[ワーキングプア」の問題を提起していた社会部のチームともすぐに合流し、内容は深みを増していった。
 番組は、当初「日本の貧困」という仮のタイトルでスタートした。しかし、この「貧困」という言葉の意味を巡って、様々な意見や疑問が飛び交い、テーマがなかなか決まらないという事態が起きた。
 そもそも日本に「貧困」というものが存在するのか? 「貧困」という言葉が、番組上適当であるのか? という疑問である。
 現在世界には八億人の飢餓人口が存在する、と言われている。食料の枯渇に苦しみ、明日の命をも危うい人々・・・。そうした人々の状態はまさしく「貧困」であり、「絶対的貧困」である。それに比べ、日本は、かつての勢いは失われたとはいえ、いまだに経済大国であることに変わりはない。その日本で、「格差が広がったとはいえ、『貧困』とまで言ってよいのか?」
 「世界の飢餓と比べた時、日本の現状を『貧困』と呼べるのか? もし『貧困』ではないのなら、何を番組では伝えていくのか?」
 チームでは、この点を巡って、何回も議論を繰り返した。確認したのは、まずこの番組では「日本国憲法」をひとつの指針とするということであった。

日本国憲法の第二十五条「生存権、国の生存権保障義務」

 そこには、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と決められている。このことが、今の「経済大国」の日本で守られているのか?
 国が保障しているはずの「健康で文化的な最低限度の生活」。そのためのセーフティネツトとして存在するはずの生活保護。しかし、その生活保護水準以下で暮らす、まじめに働いても豊かになれない[ワーキングプア」の人々が大量発生している現実・・・。
 「どう考えても、深刻な問題、『新たな貧困』という事態が発生している」
 これが、取材チームの共通認識となり、「ワーキングプア」というテーマヘと結びついていった。
 取材が進むにつれ、ワーキングプアの問題は、現代において、人間にとって「仕事」とは何か、「労働」とは何か、ということをあらためて問いかけている、と確信するに至った。
取材させていただいた人々はどの人も「真面目に働いる」「一生懸命仕事を深している」しかし、人々は、仕事を奪われたり、または苛酷な状況の中での仕事が続いている。
単に、生活の糧のための仕事を失うということにとどまらなかった。
それは、仕事への「誇り」、人間としての「誇り」が奪われていくことでもあった。これに関して、生活保護の問題を取材していたスタッフの報告が忘れられない。
「私が取材している人たち、ワーキングプアの人々は、ものすごく働く意欲を持っています。真剣に働きたいと考えています。そうした人々は、生活保護のほうが受け取る金が多くても、誰もそれを受けたいとは思っていません。皆、仕事をしたい、誇りある仕事をしたい、と思っているんです」

 高齢者や仕事ができない人など、本当に暮らしに困っている人たちに対して、きめ細かくセーフティネット=生活保護を充実してゆくことは、欠かせないことだと思う。
 しかし、「格差社会」や「ワーキングプア」の議論の中で、「セーフティネットの充実」ということだけが、強調され過ぎるきらいはないだろうか? それさえ充実すれば、あたかもすべての問題が解決するかのように・・・。
 「セーフティネット」が必要以上に強調されない社会、つまり、人間が人間らしく暮らせる、誇りを持って働ける社会、労働に対する正当な報酬を得ることができる社会、それこそが求められているのではないだろうか。
 『ワーキングプア』で取材させていただいた人々から教えられたのは、「仕事」「労働」は人間の尊厳、誇りであり、その「誇り」はきちんと守られなければならない、ということであった。

この本は、取材したディレクター・記者・カメラマン・音声マンが、「ワーキングプア」の人々のところへ何回も通い、ひとつひとつ事実を確かめ、今の日本の現状を伝えようと「志」を持って現場を記録したドキュメントである。
 今の日本を考える上で、ひとりでも多くの人々に読んでいただきたいと、切に願っている。
    藤木達弘(NHKスペシャル番組センター チーフ・プロデューサー)
 
 (続く)

スポンサーサイト


この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバックURL
→http://2006530.blog69.fc2.com/tb.php/302-33e68607



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。