カウンター 読書日記 『オールニートニッポン』(4)
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『オールニートニッポン』(4)
『生きさせろ』からの<引用続き>
  ・・・
 「もちろん風俗なんてやったことなくて初めてだったんだけど、依存してたんで働き始めました。風俗の仕事は嫌だったけど、OLと違ってやった分だけ評価されるのはよかった。OLはみんな同じで評価とかわからないから。私は誰かに必要としてほしかったから」
 しかし、もちろんいいことばかりではない。
 「うつ病だってオーナーに言ってたんですけど、薬飲んでるから眠くなったりして寝てるとやっぱり怒られるし、体調悪くて起きあがれない状態で『休みます』っていうと、『休み多いんならこっちも考えるよ』っていわれて。どんなに辛くても行ったり」
 あゆみさんのように、精神的な病気を抱えながら風俗で働く女性は多い。その理由は、普通の仕事だと毎日行かなくてはいけなかったり、シフトが決められてしまうからだ。風俗はその点ではまだ融通はきく。一日行けば、その日にお金がもらえる。しかし、そうやって風俗の仕事をし、さらに病気をこじらせていく女性も多い。
「結局、風俗は半年くらい続けました。それから、旦那の実家の鹿児島県に引っ越しました。旦那に突然『実家に帰る』っていわれて。お金が尽きたからです。私のお金たけでもやっていけなかったから。
その当時で、旦那には300万くらいの借金があって」
 そうして2人は鹿児島で新しい生活を始める。旦那の実家で親と同居の生活だ。しかし、実家に帰った旦那は相変わらず働かない。昼はスロットをして、夜はプレステをする。あゆみさんは「私が働くしかない」と、またしても風俗の仕事を始める。
 「鹿児島では、働くところも風俗くらいしかなくて。そのときは、自分には風俗しかできないんじゃないかって思ってました。旦那の親にはバレませんでした。とにかく関東に戻りたい一心で働いたんです」
 そうして、がむしゃらに働いた彼女は、店でナンバーワンとなる。デリヘルの店で、一回の女の子の取り分は一万円いくかいかないか。2年半後、彼女はとうとう鹿児島を出る決心をし、離婚。離婚の決心がついたのは、いまの旦那と出会ったからだ。
 「彼との出会いもメンタル系のチャットですね。それでメールとか電話とかするようになって、実際に会って。彼の家にそのまま転がり込んで、2年後には結婚しました」
 旦那は34歳でバツイチ。フリーのSEで、「働かなくていい」といってくれる。ある意味、メンタル系の女性の「アガリ」とも言えるケースだ。結婚して主婦という肩書きを手にし、堂々とひきこもることを理想とするメンタル系女性は多い。
 が、そんな旦那自身も「うつ」だ。旦那の「うつ」の原因は、おもに過労と転職、そして離婚。
 「もしいまの旦那と会ってなかったら、鹿児島で自殺してた」
あゆみさんは当たり前のようにそういった。

 「働かなくていい」と言ってくれただけでなく、旦那は他にもさまざまなことをしてくれた。千葉に移ってから行った病院で、彼女はうつ病だけでなく、統合失調症とパニック障害と診断されたのだ。旦那は統合失調症なら障害者手帳をもらえるはずと、調べて手続きをし、障害者手帳をとってくれた。現在、あゆみさんは障害者手帳二級を所持し、2カ月で20万円ほどの年金をもらっている。周りのメンタル系の友達にも、精神障害者手帳を持っている人はたくさんいる。なかには生活保護を受けている人もいる。
 「実際、生活保護の人に会ったこともあるんですけど、本当に働くのもままならないような状態だったから、それで働けっていわれても無理だろうなって思います。ただ、なかには『働けるだろ』って人もいますよ。そんだけ外に出れるんだったら働けるんじゃないかって」
 しかし、メンタル系の人々にとって、生活の不安は切実だ。そんな状態の人には、まず金銭面の不安を取り除くだけでも十分病状は変わるはずだ。
 働くことにドクターストップがかかっているあゆみさんだが、最近、スナックのバイトを始めた。時給は1500円。仕事は夜7時から12時半までだ。仕事以外の時間は、ずっとネットをやっている。
 「ほとんど、ひきこもってて外出ないですね。毎日、スナック行くまではチャットばっかりです。メンタル系の。スナックで働く前は、家事が午前中に終わって、旦那帰ってくる夜11時くらいまで、ずーっとチャットやってました。12時間くらい。完全にネット依存ですね。でも、そう
じゃないと誰かとコミュニケ-ションをとる手段がないんです」
 メンタル系サイトに入り浸りのあゆみさんの周りでは、やはり自殺する人が後を絶たない。
 「周りで自殺した人は、1人は過労でした。みんなで『少し休職したら』って言っていたのに、働いて働いて、自宅で首吊り。同じ年の男性です。もう1人、最近自殺した子は、働くところがなくて、親からも見捨てられてる感じで居場所がなくて、その子は飛び降り」
 私の周りでも、メンタル系の友人知人などは、年に数人、命を断ってしまう。しかし、死ぬくらいなら、障害者年金や生活保護で生き延びればいいのだ。彼女も言う。
 「みんないままで一生懸命働いて税金払って、それで病気になった人たちだから、死ぬくらいだったら生活保護とかもらえばいいと思う。病気持って働いてると、どうしても「うつ」のときは働く気も出てこないし、働いてても仕事が遅くて怒られたりとか、そういうのも会社はわかってくれないし、いえばクビになるからいえないし」
 いまは結婚し、生活面の不安からは解放されたあゆみさんだが、将来への不安は尽きない。
 「旦那もフリーでいつ仕事がなくなるかわかんないし、私も定職についてないし、本当にこの先、不安です。私は仕事がなくて風俗に行ったけど、年とればそういうこともできなくなるし、年とればとるほど定職につくのが難しくなる。それでどんどん自分を追いつめる。ときどき、旦那と離婚の話とか出るんです。喧嘩したときとか。そういうとき、旦那は『もうお前生活保護受けて暮らせ』って言うんです。そういうとき、死にたいと思います」
 生活の大部分を旦那に委ねている彼女は、旦那とのちょっとしたいざこざで、自分の生活が根底から崩れてしまう恐怖を昧わってしまうのだ。
 私の二つ年下のあゆみさんは、やはり就職氷河斯世代の自分を損していると思っている。
 「むかしは自分から好きな仕事選べたって話とか聞くと、いいなって思います。そういうことと「うつ」の人が多いのって、絶対関係あると思う。いま、偉い人って、就職難とか味わってないですよね。そういう人が私たちみたいな就職難に直撃したら、絶対「うつ」になってたと思う。だからせめて、病気を認めてくれて、働かせてほしい」
 そんなあゆみさんは、最後に少しだけ希望を持っていることがあるといった。
 「3年後くらいには、フリーターとかニートとかの人達が国家試験を受けられるようになるって聞いて、受けたい。あと、大きい会社だと、障害者を何パーセントか入れるっていう決まりがあるじゃないですか。それが増えてくれればいい。そうしたら障害者の枠で就職できるんじゃないかって、それは希望だよねって、周りのメンタル系の友達とも話してます」

 はたして、障害者枠で就職することは29歳の女性にとってそんなに「希望」となるものだろうか。
それが「希望」なら、私たちは絶望的な世界に生きている。しかし、私の知人でも、障害者枠で就職した人がいる。仕事がないことなどからノイローゼ状態になり、精神障害者となって晴れて就職できたのだ。裏技ともいうべきやり方だ。しかし、時代が違えばその人もあゆみさんも、障害者雇用でなく、普通の枠で当たり前に就職できたのだ。
 彼女の話を聞きながら思い出したことがある。それは数年前、私が出合ったホームレスの女の子だ。彼女は都内でホームレス生活をしながら彼氏と同棲していた。もちろん彼氏もホームレスだ。彼女の前職は風俗嬢だった。家出同然で実家を飛び出し、風俗の世界に入り、そしてホームレスとなった20歳の女の子はやはり精神的な病気を抱えていた。心の不安定さと風俗業界はなぜか仲良しだ。危ういバランスでそれは共存し、風俗業界は彼女たちのような女の子たちを使うことで莫大な利益を産み出している。知人で、風俗で働いた経験からのちにフラッシュバックに苦しみ、自殺した女の子がいたのだが、そのことを思うと彼女たちへの対価はあまりにも安い。あゆみさんがいっていたように、デリヘルで1人あたり1万円いくかいかないかだ。しかし、メンタル系の女の子たちは風俗の世界へと向かう。精神的に不安定な人間を受け入れてくれる業界はそこくらいしかないからだ。
 あゆみさんは、今日もメンタル系のチャットで誰かと語り合っている。そんな彼女の家には、ネットオークションで買った犬3匹と、ネットで出会った旦那がいる。
 「全部ネットで調達しました」と笑うあゆみさんは、もっと幸せになる権利がある。絶対に。
  
  「希望は障害者枠での就職」(完)。 

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