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今、梶山季之を読む
★「岩波現代文庫(いわなみげんだいぶんこ)は、岩波書店が発行する文庫シリーズ。
  2000年に創刊。内容によって、学術(青)、文芸(赤)、社会(緑)の3つに分類されている。

 日本および世界の古典的学術書や文学作品を収める岩波文庫と異なり、主に20世紀後半に出版された
 文学・学術書を発刊している。同時代ライブラリーや岩波書店刊の単行本として出版されたものを
 文庫化して復刊させたものが中心であるが、他社から刊行された書籍を復刊したものも少なくな    い。」・・・  (ウィキペディア)

 岩波現代文庫・今月の刊行は、以下の通り。
 http://www.iwanami.co.jp/hensyu/genbun/
   

 ● 2007年9月14日発売

 ①『騒動師たち』 野坂 昭如
  ★時は1960年代末,「ケバラ」をはじめとする大阪・釜ケ崎の騒動師たちが,貨客船をのっとり米国 を珍道中した後,東大安田講堂攻防戦で「総学連」に味方して機動隊と一大決戦を繰り広げる,破天荒 の長編小説.(解説 川本三郎)
 ISBN978-4-00-602115-3

 ②『ルポ 戦後縦断 トップ屋は見た』 梶山 季之
  ★皇太子妃スクープ,売春防止法施行,蒸発人間,産業スパイ……,昭和30年代の世相を語る上で不 可欠な硬軟双方の主題を追跡した著者渾身のルポルタージュ選.しなやかで腰の強い取材力が庶民の声 に肉薄する.(「梶山先輩の思い出」 藤本義一)
 ISBN978-4-00-602124-5

 ③『古典を読む 万葉集』 大岡 信
  ★若々しく生成し,爛熟し,繊美にまで到達した,一個の生命体としての『万葉集』.詩人はその感 性のすべてを開いて万葉の広々とした言語世界に接し,歴史と人間のドラマをみとり,現代に通ずる限 りない面白さを解き明かす.

 **********************
  

 書店の棚で見かけて手にとってはいたが、何といっても異色なのは

 ①・②の2冊。

 先ず①の詳細案内から、・・・ 
 

 ★野坂昭如さんの小説,エッセイは1960年代後半から70年代半ばまで怒濤のように次々と発表され,若者を中心に多くの支持を得ました.また文学以外に,歌手やキックボクシング,ラグビー,コメ作り,選挙への出馬など,その活動は社会的にもさまざまなインパクトを及ぼしました.
  今日,野坂さんの小説は,文庫本としては『アメリカひじき・火垂るの墓』『エロ事師たち』など十点ほど,単行本は2000年代に入ってからのものを中心に,合わせて五十点ほどが「現役」ですが,70年代に出版された小説の多くは入手が難しくなっています.インターネットの掲示板では野坂さんの作品の,比較的廉価な文庫本での再刊が求められています.
 野坂さんは2003年5月に脳梗塞で倒れて以来リハビリにつとめる毎日ですが,TBSラジオ「土曜ワイド/永六輔 その新世界」中のコーナー「野坂昭如さんからの手紙」に寄せられる野坂さん復活へのリスナーの期待には毎週熱いものを感じます.それは主に,権力への反骨,平和や反戦をうたった小説,エッセイをなつかしむ昔ながらの読者(主として2007年に定年を迎える「団塊の世代」)の声なのかもしれません.他方,上にも記したように,ネットの掲示板には野坂作品を初めて読んだ若者の素直な驚き,感動が書き込まれています.今こそ野坂さんご自身が健康を回復されることと同時に,60~70年代の息吹きを圧倒的に伝える野坂作品が「ルネサンス」される必然性があります.
 このたび岩波現代文庫では,「野坂昭如ルネサンス」と銘打ったシリーズを発足いたします.2007年5月16日に『好色の魂』『水虫魂』の2点を同時刊行し,これ以降2008年3月まで隔月で1点ずつ,合計7点の小説を刊行してまいります.
 野坂作品の第一の特徴は,その文体の圧倒的なスピード感です.関西弁の饒舌な「戯作体」,古語,漢語を多用した表現などにより,読者はあれよあれよという間に野坂ワールドに引き込まれます.特に短編のスピード感は圧巻です.
 第二の特徴としては下層の庶民の(多くは娼婦だったり,エロ事師だったり,ヤミの商売の人物)悲哀が凝縮した形で書き込まれていることがあげられます.そして作品はしばしば主人公のあっというまの落命により結末を迎えることがあります.特に戦争を背景にした悲惨.これが反戦への志向として,「70年安保」という時代的雰囲気の中で若者の支持を大いに得たのだと思われます.
 第三の特徴は「焼跡・闇市派」としての体験に基づく圧倒的な「死」の記憶の作品化です.60~70年代の『アメリカひじき・火垂るの墓』『とむらい師たち』『骨餓身峠死人〔ほねがみとうげほとけかずら〕』から,80年代の三島由紀夫の死を扱った『赫奕〔かくやく〕たる逆光』『ぼくの死の準備』と並べ,自身の闘病体験を付加すれば,野坂さんはずっと「死」を見つめてきた作家だということが言えるでしょう.
  「野坂昭如ルネサンス」は,必ずや新しい読者に感動をよび起こすアンソロジーであると確信します.1970年代の感性,圧倒的なスピード感がたちまちのうちによみがえります.野坂作品をまだ読んだことのない若い方のみならず,かつて同時代に野坂ワールドを体験した中高年の方にも,ぜひご一読をおすすめします.(T・H)

 ★「野坂昭如さんからの手紙」(TBSラジオ「土曜ワイド/永六輔 その新世界」2007年5月12日放送分)より

 この度,約四十年前に書いた作品が岩波から文庫になる.素直にしみじみ嬉しい.岩波の名前に魅かれて読んで下さい.
 来年三月までに全巻七冊刊行予定.
 この度は『好色の魂』『水虫魂』二巻である.
 刊行日は五月十六日,全巻和田誠氏のカバーで飾られる.
 今回の解説は永六輔氏というのも嬉しい.
 『水虫魂』は活字へ移った最初の作品だ.
 すべてがここにある.
 あの頃,俺は天才だったのだろうか.
 今の世に再録されるとういことが,その証.
 当時,日の出の勢いの諸名家に囲まれながら,うわべはともかく,内心ビクビクもので世を渡っていた.
 その頃から今に至るまで自分の作品を読み返したことはない.
 読めば,おのが無能さを突き付けられ,以後恐くて一字も書けなかっただろう.
 二十代から,ぼくの行く先々で永六輔の名を聞いていた.
  当時の彼は,ジーパンにゴムぞうりという出で立ちで,目つき,物腰,万事鋭く,存在そのものが際立って目立っていた.
 あれから半世紀,現在に至るまで,ぼくは永さんを天才だと思っている.
 永さんには多大な迷惑をかけ続けてきたらしい.
 胸に手をあてて省みて,思い当たる節はいくらもある.だからといって,その償いに誉めているわけじゃない.
  永六輔の解説を待ちながら,彼ならきっと我が片言隻句をつかまえて,いい言葉を編み出してくれるだろうと思っていた.
 その期待は裏切られなかった.
 永さん どうもありがとう.
 公共の電波の私物化は,旧日本軍の十八番〔おはこ〕.まことにいけないことだ.ましてやラジオ界随一のTBS土曜ワイドにおいておや.
 ……と判っていて,敢えて私物化する.
 どうぞ読んで下さい. 野坂 昭如

 ***********************
 
 <続>  

 
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