カウンター 読書日記 続・『匂いのエロティシズム』・3
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続・『匂いのエロティシズム』・3
  *媚薬としてのムスク
 
  
  麝香の歴史は古く、古代インド医学「アーユルベーダ」の医書にも薬の一種として載っている。古くは阿片と麝香を混ぜたものが強精剤や薬品として用いられていたらしい。
 中国にも紀元前に麝香が伝わったことを示す記録が残されている。これは、ジャコウジカの生息地がヒマラヤ山脈周辺だということを考えれば、当然のことかも知れない。
 それに対し、古代ギリシャもローマ人も麝香の存在すら知らなかったという。ヨーロッパに知られるようになるのは、12世紀で、アラビアのサラディン王がローマ皇帝に贈ったのが記録の上で最古のものだという。そのヨーロッパでもルネッサンスのころには様々な分野(薬品、秘薬、媚薬)で用いられるようになる。
 
 日本に麝香が伝わった時期は定かではないが、奈良時代、正倉院の目録に麝香の名が記されており、平安期になると貴族たちがさかんに麝香を使うようになる。ヨーロッパよりは早い。
 中国や日本ではどちらかと言うと医薬品として珍重されたようだ。漢方の処方には麝香を用いたものは多いし、今も日本の薬局方に残っている。

 それでも、麝香の媚薬作用や香りを重視するのはイスラム文化である。
 イスラム教の開祖ムハンマドもムスクの香りを好み、コーランにも麝香の名が登場している。
 イスラム教はキリスト教に比べると性に関して大らかで、快楽のためのセックスに罪悪感が伴うことはなかった。・・・

 ただし、この麝香は、今日香料業界で使うムスクとは違うものである。香料としてのムスクもかつてはこの麝香そのものであったらしいが、近代以降の香水や香料では、麝香の香りだけを強調するようなことはまずない。近代以降のムスク香料というのは、麝香そのものから溶剤抽出によって匂い成分だけを取り出したもので、ムスク・アブソリュートと呼ばれる。
 ところが、現代の香料業界では、値段の高騰や合成香料の開発、そして動物愛護の観点から、このムスク・アブソリュートですらほとんど使われることはなくなっている。・・・現在新たに市場に出る香水のムスク・ノートは、ほとんどこうした合成ムスクで構成されている。

 歴史的にみると、これら合成ムスクの使用を促進したのは、皮肉にも1970年代の「ムスクブーム」であった。これは、60年代のヒッピー・ムーブメントの余波ともいえる現象で、自然回帰や精神世界への傾倒の流れ中で麻薬や媚薬が再評価され、フリーセックスやセックス・リボルーションといった風潮と相まって、麝香の媚薬的効果への関心が高まった。
 麻薬と香料が「媚薬」という原点で結びついたわけで、古代インド神話への回帰である。
 
 
    「アニマル」な人間。 

  動物から採られる香料=動物性天然香料(麝香のような)がある一方で、香料業界には「アニマル・ノート」という香調の分類があり、こちらは動物を思わせる匂いに対して使う。
 
 動物的な匂いとは何かというと、あえてわかりやすく言ってしまえば、動物園の檻の中の匂いを思い浮かべてもらえば、そう間違いはないと思う。それも哺乳類、ネコ科の猛獣や霊長類の匂いに近い。


  現代では体臭というと、臭いものという連想が働く、(テレビCMではこれからの季節目にする機会が増えるだろう)。体臭=悪臭とさえなっている。・・「清潔さ」=無臭を競い合う人々。自分の体から出る匂いを消すことに躍起になっている人々。 
 人間の体臭に対してすらこうなのだから、動物の体臭にはそれ以上で、ペット用の消臭剤が売れ、動物園の匂いが嫌だからというので動物園に行く子供が減っているという。


 こうした事態はいつ、どんなところでもあったことではないのは明らかで、体臭=性的魅力とされていたり、体臭を嫌悪しない社会はいくらでもある。
 要するに、体臭に対する感性というのは多分に文化の影響をうけるものである。

 西洋でも、体臭や腋のしたの匂いを好む傾向がかつてはかなり広く見られ、香水の使用は今日のわれわれが考えるように体臭を隠すためのものではなく、むしろ腋のしたの匂いを強調するために用いられてきたと考えたハヴロック・エリスのような人もいる。(『性の心理』)

 ムスクの香りを女性の腋の下の匂いや体臭に結びつける例は多く、しかもその匂いは性的な刺激として働くとされることがほとんである。・・・腋の下の匂いや体臭がムスクの発見に向かわせたという可能性も否定できない。
 
 それを裏付けるように、人間の腋の下からムスク臭を有する物質が見つかっている。腋の下にあてたコットンパッドから抽出して見出されたアンドロステノールという物質は、ややパウダリーなムスク感と、白檀に似た匂いを持ち、媚薬的と言えば、これほどその言葉にぴったりの匂いはない。・・


 以下、興味津々の匂い=香りをめぐる上質な物語が続くが・・・残りはみなさんにお任せするとしよう。
 


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