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●『米軍のグアム統合計画』 ー4
                   沖縄の海兵隊はグアムへ行く


 
 ●『米軍のグアム統合計画』 

 
 ■あとがき (p153~159) 

 
 米国の計画が完了すれば、「常夏の観光地・グアム」は大きく変貌する。

 在沖海兵隊のグアム移転は、すでに日米両政府の予算がつき始めた。フィネガヤン地区とアプラ港地区に日本政府の資金で建設される消防署、隊舎、司令部庁舎の設計は契約が完了し、アンダーセン空軍基地やアプラ湾での基盤整備事業も米国で入札手続きが始まった。米国は駐機場や飛行場水道光熱施設の整備、埠頭改修にもまもなく着手する。

 アンダーセン空軍基地を中心とする空軍、アプラ湾の海軍基地を中心とする海軍のほか、アンダーセン空軍基地からアプラ湾、グアム中部や東岸、さらにはテニアンまで基地を広げた海兵隊、フィネナガヤンにミサイル防衛任務隊をおく陸軍、すなわち米四軍の一大前方展開基地ができる。グアム駐留の米軍部隊だけでなく、米本土や日本から航海・飛来してくる艦船や軍用機の演習場にもなるだろう。

 ここで当然起こる疑問は、すでに沖縄に総面積二万三三〇〇ヘクタールにのぼる三四もの軍事施設をおき、海兵隊一万二千人、空軍五千九百人、海軍千三百人、陸軍千七百人を駐留させている米国が、なぜグアムにほぼ似た機能をもつ軍事拠点を建設するのか、ということだろう。

 米国が太平洋戦争で確保し、終戦以来軍事基地として使用してきた沖縄では、日米安全保障の基軸だとして本島の中央部を占拠されて住民の間に過大な基地負担や相次ぐ事件・事故・騒音に対する怒りや不満が絶えない。本土他府県のような「普通の県」として発展できないことへの苛立ちも強い。「脅威」がソ連から中国、北朝鮮、さらにはイラクヘと変わろうとも、一貫して沖縄は「戦略的に重要な前方展開基地」と主張するのも、米国の言い分に過ぎず、六〇年以上も米軍基地を押し付けられてきた県民には納得しがたい。住民の不満は、基地撤去運動につながって外交問題化し、日米関係や日米軍事同盟をヒビ割れさせる可能性を秘めている。

 一方、グアムは米国の最西端に位置する米国領。沖縄より米本土西岸やハワイに近い一方、弾道ミサイルや核兵器を有する中国や北朝鮮からは沖縄より遠いという、米国にとってきわめて戦略的な場所に位置している。米国が「不安定の弧」と呼ぶ東アジアや中近東にも、緊急に部隊を展開できる。米国領で、しかも島の三分の一を米国防総省が所有しているため、米軍の訓練や移動に制限もない。すでに空軍と海軍が駐留している島に航空機と艦船で緊急移動する即戦部隊の海兵隊が一万人近くも加われば、グアムは米国西岸からアフリカ東岸に至る地球の半分を管轄地域(AOR)とする米太平洋軍の一大前方展開拠点になる。

 米国としては、アジア・太平洋の軍事拠点をハワイと沖縄だけでなく、グアムにも置いた方が、米国や同盟国の安全保障、対テロ防衛、将兵の訓練、展開、休暇、後方支援などのために都合がよい。万一、沖縄から撤去せざるを得なくなったときに備えるためにも、自国領グアムに訓練基地を建設し、部隊とその家族を駐留させたい。それは、米国が進めている米軍再編(リアラインメント)・変革(トランスフォメーション)計画ともマッチする。しかも、グアムにおける施設やインフラの整備費は、算定額一〇二・七億ドルのうちの六〇・九億ドルを日本政府が負担するというのだから、米国としては公然と「他人のマワシ」で相撲がとれるわけだ。沖縄の基地問題をいくらかでも緩和する一方で、自衛隊がグアムやテニアンの米軍基地を利用して共同演習ができるようになれば、「日米同盟」を強化したい日本政府にとっても都合がよい。

 日米がロードマップに合意したのは、同時多発テロを受けて国民の間に不安感を駆り立て、「新たな敵」に対応するため「先制攻撃論」を唱え、ウソまでついてイラク戦争に突入した◆ブッシュ政権と、同政権の単独行動主義とイラク攻撃を支持した◆小泉・超親米政権であったという事実は、改めて指摘したい。

 特殊な状況のもとで特殊な政権同士が交わした合意であったことを考慮すると、小泉政権とは明らかに異なる対外政策と。日本の姿”を打ち出した鳩山民主党政権が、ロードマップ合意を見直すのは当然であろう。ところが、国内では大手メディアを中心にブッシュ・小泉合意を「絶対視」し、見直した場合の両国関係の悪化を懸念する声もある中で、新政権は普天間航空基地の沖縄県内移設という「縛り」からなかなか抜け出せないでいる。

 こうした日本国内の立ち往生状況をよそに、米国は、沖縄から九千人近くの海兵隊員をグアムに移すこととし、そのための駐留・訓練施設をグアムに建設する計画を着々と進めている。米国は、沖縄の嘉手納以南の基地の閉鎖・返還も、在日米軍再編ロードマップに従って、普天間基地の代替施設の目鼻がついてから、と強弁するが、米国のグアム基地計画を読むと、普天間基地を含む在沖海兵隊の「日本国外=米国内」移転は、米国にとって既定の方針だったことがうかがえる。

 沖縄から海兵隊がグアムに移れば日本や東アジアにおける抑止力が減退するという主張も、グアムではすでに沖縄から移転する海兵隊を受け入れるための施設整備に着手していることやグアムの戦略的位置を考えれば、反論する値打ちさえない。

 
 悲しいことに、米軍の「グアム統合開発計画案」も「グアム統合軍事マスタープラン」もインターネットで公開され、これらにもとづく「環境影響評価案」もグアム住民の意見を徴するためにインターネットで公表されているにもかかわらず、日本のメディアではまったく黙殺されている。中央紙の記事や社説、テレビの報道番組に登場するのは、自由民主党政権の日米関係を踏襲せよ、鳩山政権は小泉政権とブッシュ政権の間で交わされた「ロードマップ」合意を順守して早く普天間基地を沖縄県内(名護市辺野古)に移設すべし、そうしないと日米関係がこじれる、という声ばかりだ。二〇〇九年末に北沢俊美防衛大臣に同行してグアムを訪れた記者たちも、グアムの既存米軍基地や基地建設計画について調査報道することはなかった。防衛省が二〇一〇年一月にグアム移転事業の本格的開始を公表しても、メディアはそれを「普天間基地の沖縄県内移設がなければ海兵隊のグアム移転もない(だから鳩山政権は日米合意を順守すべし)」というゲーツ米国防長官などの発言に関連づけて詳しく報じることはなかった。

 なぜメディアは、米国が進めているグアム基地建設計画を無視するのか。これは最近の報道機関の保守化や、記者クラブ(発表もの)依存による真実を探究しようというジャーナリズム精神の衰退と関係しているのかも知れないが、もう一つ、公表されている文書が仮定法(「この選択肢だと・・・」「この計画が実行されれば・・・」)や軍事術語の多い英文で書かれている上に分量は膨大で内容も多岐にわたるため一人の記者ではとうてい読みこなせない、しかもかなりの情報を補充しないと記事にしにくい、といった問題が「無視」「黙殺」につながっている可能性もある。 

 
 遅ればせながら、米国のグアム基地建設計画のポイントを、本書で紹介することができた。普天間問題や米国のアジア太平洋戦略、日米同盟を含む米軍再編問題を考える上で、これは決定的に重要な資料であり、本書が活用されることを願ってやまない。多くのメディアにもぜひ取り上げていただき、一人でも多くの国民にその内容を伝えてほしい。

 ただ、沖縄から海兵隊をグアムに移せばよい、で済む話ではない。スペイン植民地、米海軍軍政府、太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、米国の未編入領土という名の植民地・・・といった、近年の「亜熱帯の楽園」という名前の裏で惨苦の歴史をくぐり抜けてきたグアム住民の歴史に思いを致すと、一六〇九年の薩摩侵攻以来の、とくに沖縄戦とその後米軍基地を担わされてきた沖縄住民の歴史と重なるだけに、もろ手を挙げて賛成というわけにもいかない。執筆中、ずっと心に引っかかっていたが、まずは在沖海兵隊の移転がきっかけになったグアム基地拡張計画に焦点をあて、グアム住民の声を若干お伝えすることにとどめた。

 最後になったが、本書をまとめるにあたって、高文研の梅田正己氏にはひとかたならぬご助力を得た。梅田氏と編集スタッフの皆様に、心からお礼を申し上げたい。

 二〇一〇年一月 那覇市金城にて  吉田 健正

 ***********  

 
 ●『米軍のグアム統合計画』   <了>。




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●『米軍のグアム統合計画』ー3
 
 ●『米軍のグアム統合計画』  

 
 ■Ⅴ章 グアム住民はどう見ているか

 略・・・

 ★「植民地」グアムの訴え (p144~147)

 
 グアム住民の不満の背景には、第TI章で述べたグアムの政治的地位にある。一九五〇年に米連邦議会が定めたオーガニック法(グアムの憲法)により、グアム住民はアメリカ国民となったが、大統領を選ぶ投票権はなく、米下院に送る代表に議決権はない。つまり、グアム住民はアメリカ人でありながら、国政での発言権を認められていない。基地建設計画も、遠く離れたアメリカ政府が一方的に決定したもので、グアム住民には自分たちの声を反映させる機会は与えられなかった。グアムは、国連では、世界に残っている一六の非自治領(NSGT)、すなわち植民地と位置づけられている。

 二〇〇七年六月二〇日に国連の「脱植民地化二四か国特別委員会」で、ホープーアントノネットークリストバルを代表とするグアムのチャモロ住民が、米国の軍事基地拡張が進ごグアムの「植民地的地位」と住民の「民族自決権」にもっと関心を払うよう、国際社会こ呼びかけた。

 クリストバル女史によれば、「グアムの植民地化は、住民の心に影響を与えてきた。グアムのチャモロ人は、さまざまな肉体的・精神的健康問題と法的問題を体験している。人々は、矯正施設、保護観察リスト、精神病施設での割合が高く、家庭内暴力、薬物乱用、ティーンエージャー自殺、学校落ちこぼれ、その他の社会的問題の比率も高い」。カリフォルニア大学ロサンゼルス校アジアーアメリカ学部のキースーカマチョ助教授は、「米国も国連も、グアムのチャモロ人を民族自決に向けて準備する努力を怠ってきた」と指摘した上で、米国の対グアム政策の歴史を「無関心、無知、人種差別主義、単独行動主義」と形容した。 これにチャモロ人の祖先の土地や文化への強い愛着心を考え合わせると、今後の米国政府の行動次第では、こうした不満はグアム植民地解放運動に発展しないとも限らない。

 
 ★米軍による事件・事故への心配 

 
 すでに空軍と海軍が大きな基地を構えるグアムに海兵隊基地が加われば、事故や事件も増えるだろう。二〇〇五年一月八日には、グアムのアプラ港を母港とする攻撃型潜水艦サンフランシスコがグアム近くの海底の山に衝突して、乗組員一人が死亡、二四人が負傷した。

 二〇〇八年二月二三日には、アンダーセン空軍基地を離陸したばかりのB2ステルス爆撃機が基地内で墜落した(二人のパイロットは緊急脱出して助かった)。米空軍がもつ全二十一機のB2ステルス爆撃機はミズーリ州のホワイトマン空軍基地をホームベースにしているが、アンダーセン空軍基地にローテーションで飛来して、四か月の飛行訓練を行うことがある。事故機も、他のB2やB2ステルス爆撃機と訓練を終えて、ホワイトマン空軍基地に帰る寸前だった。

 また同年七月二一日には、アンダーセン空軍基地を飛び立ったB52爆撃機がアプラ港の北西海上で墜落、搭乗員六人全員が死亡した。原囚は水平尾翼の不調と思われるという。 米兵による犯罪に関する報道は少ないが、米軍準機関紙『星条旗』(二〇〇六年四月一七日)によると、アンダーセン空軍基地で性的暴行や家庭内暴力などの飲酒事件が相次いだため、同基地の第三六航空団、第七四航空機動中隊、海軍ヘリコプター海上戦闘中隊の全員に三日間の飲酒禁止令が出されたという。米軍人・軍属・家族と地元住民との軋蝶は、現在のところ、伝えられていない。

 一方、前掲の山口氏の『グアムと日本人』によれば、(グアムで働く正規雇用員のうち、実に三人に一人(三一%)が連邦政府あるいは現地政府に雇用された公務員であり、その大半を先住民のチャモロ人が占めている。そして連邦政府に雇われた公務員の多くが基地関係者であり、現地政府の公務員の相当数が基地に関する仕事に従事している」。これらの基地関連公務員が、基地建設計画に異議を唱えたり、計画を批判したりするのは、きわめて難しいだろう。  

 ************** 

 
 ■Ⅴ章 グアム住民はどう見ているか   <了>

   続く。 


 






●『米軍のグアム統合計画』ー2
 
 ●『米軍のグアム統合計画』   吉田健正  高文研  2010.2.10 刊

 ■序章 米軍再編とグアム  <続き> 

 
 ★「環境影響評価案」が伝えるグアム軍事拠点化の全容

 


 本書では、グアムの歴史、政治的地位、軍事史、経済などを見ながら、米国がなぜグアム基地拡大計画を進めているのか、米側の資料をもとに検証したい。

 第1章では、グアムとテニアンが果たしてきた軍事的役割の歴史と、現状を概観する。太平洋戦争における激戦地、その後の対日爆撃拠点としての両島が担わされてきた役割、朝鮮戦争やベトナム戦争でグアムが米国の出撃基地として使われた歴史である。ここではまた、グアムとテニアンの米国領としての政治的地位についても説明を加えた。

 第Ⅱ章では、在沖米軍基地に関する一九九〇年代から二〇〇六年の在日米軍再編ロードマップに至る経過を追う。小泉政権下の日米軍事同盟強化、沖縄の基地負担軽減という名を借りての海兵隊普天間航空基地の沖縄県内移設や沖縄からグアムヘの海兵隊員・家族の移転に関する合意について、その背景や狙いを理解する助けになるだろう。米国から見たグアムの戦略的適性についても、詳しく触れた。

 第Ⅲ章では、在沖米軍基地の規模や形態に照らしながら、米海軍施設本部の「環境影響評価案」に基づいて、グアム基地建設計画の概要を紹介する。とくに普天間基地の沖縄県内(名護市辺野古)移設に関して、この文書が、グアム北端の広大で、しかも冷戦終結後はそれほど使用されていなかったアンダーセン空軍基地とその周辺を、司令部機能、居住機能、飛行場機能、航空訓練機能などの観点から推奨している点を検証する。この文書によれば、海に面する北東側と北西側にそれぞれ二本の滑走路を備えるアンダーセン空軍基地は、沖縄から移転する第三海兵遠征隊の飛行部隊が固定翼機やヘリコプターの飛行訓練、離着陸訓練、搭乗・搭載訓練を行う条件(実現可能性)を満たして余りある。

 米国は、在沖海兵隊の移設について、オーストラリア、フィリピン、韓国などのアジア・太平洋諸国に打診したが、いずれも難色を示した。
日本政府だけが、普天間航空基地の国内(沖縄県内)を受け入れただけでなく、海兵隊のグアム移転にからむ施設・インフラ整備費の分担(六割強)にも応じた。日本と地域の安全保障を日米両国で担うためである。その意味では、グアムにおける基地建設は。【日米共同計画】だと言えよう。本書で触れているように、日本の自衛隊機はすでにアンダーセン空軍基地やグアム近海で米軍と合同演習を行っている。米国がなぜグアムに白羽の矢を立てたのかについても説明した。

 グアム基地整備・拡張計画の中心は、沖縄から移転する海兵隊の、飛行訓練だけでなく、射撃訓練、強襲揚陸訓練、都市型戦闘訓練などのためのさまざまな訓練施設、隊員と家族のための居住空間を準備しようというものだが、「環境影響評価案」によれば、訓練は北マリアナのテニアンでも行われる。グアムでは旧海兵隊飛行場や弾薬庫地区と接するアプラ港に原子力空母の接岸埠頭や水際作戦を行う強襲揚陸艦の接岸埠頭を整備する、またアンダーセン空軍基地に接し、海兵隊司令部が予定されている地域に陸軍ミサイル防衛任務隊を新設する計画も盛り込まれている。そこで、第Ⅳ章では、これらの計画を要約して、米国のグアム基地強化構想の全容が把握できるようにしたい。

 最後の第V章では、米軍基地拡張計画に対するグアム住民の声を紹介する。基地拡張計画は、これまで観光収入と基地収入の落ち込みにより悪化したグアム経済を浮揚させると期待する向きもあるが、建設事業は一時的なものであり、しかも民生には考慮が払われていない。長期的には、基地関連の事故や事件、グアムの径済、人口構戌、社会、文化、自然環境への悪影響を懸念する声も強い。グアム住民は、米国の市民権をもちながら米国の「未編入領土」すなわち植民地として、人権憲章を含む合衆国憲法の全面的適用を受けない。しかもグアム政府職員も先住民のチャモロ人も多くが基地収入に依存しているため、基地拡張には反対の声を挙げにくい、という現実もある。

 なお各章には、「グアムの政治的地位」や「トランスフォメーション」のように、本文で十分説明できなかったことがらについて、「注記」に似たメモを加えた。

 本書は、対米同時多発テロ(二〇〇一年)後の米国のアジア・太平洋戦略と安全保障政策、それを支える「日米同盟」を理解する上で貴重な資料になり得ると思う。膨大な、しかも「仮定法」(もし環境影響評価手続きが完了すれば・・・、もし予算がつけば・・・)を多用した資料を短期間で読み込み、紹介しようとしたため、十分かつ正確に計画の概要と意図をお伝えできたか、不安がないわけではないが、沖縄の普天間基地移設問題に深く関わる重大な事実を一日でも早く伝えたいという思いにせかされ、何よりも時間を優先させた。

 本書「はじめに」の最後(四ページ)に述べたように、防衛省(ホームページ)でも、二〇一〇年一月末現在、海兵隊のグアム移転計画はすでに実施の段階に入っていることを告げている。

 統合グアム計画室のジョン・ジャクソン室長も、「われわれの計画に変更はない。今年、(基地建設計画の着手に必要な環境影響評価最終報告がまとまったあと)決定書が署名され次第、米軍は米国政府と日本政府が資金提供するプロジェクトに対する建設請負契約を結ぶ予定である」と述べている(グアムの日刊紙『パシフィツク・デイリー・ニューズ』二〇一〇年一月二七日付)。日本国民を置き去りにして、事態は確実に進行しているのである。

 **************

 
 ■序章 米軍再編とグアム   <了>

  続く。

 




●『米軍のグアム統合計画』ー1
 
 ●『米軍のグアム統合計画ー沖縄の海兵隊はグアムへ行く』  吉田健正(よしだ・けんせい)
   高文研 2010.2.10 刊 

 
 ■序章 米軍再編とグアム

 ★観光の島から再び軍事拠点へ 

 
 豊かな自然に囲まれた常夏の観光地グアム。
 この地を訪れる観光客は、年間一一四万人(二〇〇八年)。うち八五万人が日本からの訪問者だった。日本人観光客が四人のうち三人を占め、二位以下の米軍関係者観光客、韓国や台湾からの観光客を大きく引き離している。グアム観光の中心地、「恋人岬」などで知られる西沿岸のタモンには、日本資本のリゾートホテルも立ち並ぶ。

 そのグアムで、いま、米国が大規模な前方展開軍事基地の建設計画を進めている、太平洋戦争以来、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争で重要な軍事的役割を果たしたグアムが、再び軍事拠点として生まれ変わろうとしているのである。

 それとともに、一部の観光地を除いて電気・水道・道路などのインフラ整備が遅れていた多くの地域でも開発が進むことになる。グアムの地形や自然も変わり、経済も社会も大きく変貌する可能性がある。軍事基地拡張計画が完了すれば、グアムの陸上、近海、上空には、アジア太平洋に展開する米軍だけでなく日本の自衛隊なども訓練や作戦にやってくる。グアム自身が大きな転機を迎えようとしている。

 東南アジア系と見られる人々(チャモロ族)が住み着いたグアムは、「大航海時代」に世界一周を企てたマゼランの一行が到着し、一五六五年にスペイン植民地となったが、一八九八年のアメリカ・スペイン(米西)戦争で米国領に変わった。真っ白い砂浜、サンゴ礁特有のエメラルド色の海、椰子の木、亜熱帯気候、独特の石柱や言語・舞踊・音楽・風俗で知られ、「南海の楽園」とも称される。足跡の形をした細長いグアムには、その歴史を反映して、スペイン統治、米国統治、太平洋戦争などの記憶を残す名所旧跡も多い。

 首都は、島中央部西岸に位置するハガニア(またはハガニャ。旧名アガナ)。大聖堂やヨハネ・パウロニ世教皇像などスペイン統治時代の名残を強くとどめる。島の人口はおよそ一七万人(二〇〇七年)だが、その内訳は多様だ。二〇〇〇年の調査によると、全人口の約三七%はチャモロ人、三八%がフィリピンや他の周辺の島々からの移住者、六%は中国などのアジア系、七%が米本土などからのコーケイジアン(白人)移住者、そして一〇%が混血だという。したがって言語も、英語三八%、チャモロ語二二%、フィリピン語二二%と、入り混じる。

 「アメリカの一日が始まる場所」と言われるように、マリアナ諸島の南端(北緯13度28分、東経144度30分)、ハワイの西六一〇〇キロ、米本土西岸から一万キロに位置する米国最西端の領土である。東アジアにおける米国の同盟国・地域にも近い。韓国(ソウル)まで三二〇〇キロ、日本(東京)まで二五〇〇キロ、台湾(台北)まで二八〇〇キロ、フィリピン(マニラ)まで二六〇〇キロ、オーストラリア(シドニー)まで五〇〇〇キロという距離だ。
東アジア地域へは沖縄より若干遠いものの、ハワイやカリフォルニアからはより近い。

 この位置こそ、米国がグアムを西太平洋における重要な戦略的軍事拠点と考える最大の理由である。ハワイのホノルルに司令部を構え、米国本土西岸からアフリカ大陸東岸までの広大な一帯を管轄する米太平洋軍にとって、米本土やハワイより戦略的な位置にある。しかもグアムは、米国属領として米国憲法が全面的には適用されないだけでなく、同盟諸国の場合と異なり、基地建設や部隊の行動に関して条約上の制約も受けない。それに、淡路島とほぼ同じ面積(沖縄本島の約半分)しかなく、「ドット(点)」と称されるように、地図では針の先ほどしかないが、島の三分の一は米国防総省の所有地だ。

 グアムには、現在、アンダーセン空軍基地、原子力潜水艦や原子力空母が寄港するアプラ軍港、海軍弾薬庫地区、海軍通信基地などがおかれている。オロテ岬には海兵隊飛行場跡もある。太平洋戦争から冷戦時代にかけて米軍が。【不沈空母】あるいは。【槍の先端】と呼んできたこの島の基地は、一九八九年の冷戦終結後ほとんど放置され、道路、飲料水施設、港湾、滑走路なども荒れたままになっていた。強大な台風が電力網や電話網をずたずたにしてしまうこともある。最近になって滑走路のひとつが復旧されたアンダーセン空軍基地では、米本土、ハワイ、日本などから訓練のため爆撃機や戦闘機が飛来し、アプラ軍港にも原子力潜水艦などが寄港することかあるが、米国の前線基地として軍用機や艦船で「賑わった」ベトナム戦争当時の面影はない。空軍基地や軍港を抱えるこの中古【不沈空母】が、沖縄からの海兵隊移駐を契機に、新たに整備・拡大されようとしているのだ。

 在沖海兵隊のグアム移転に伴い、グアムの北一六〇キロに位置するテニアン島でも軍事訓練基地建設が進むことになる。南北二〇キロ、東西一〇キロのひし形をしたテニアンのほぼ三分の二(六四四〇ヘクタール)は、米国防総省が一九七六年に北マリアナ自治領政府から五〇年期限(延長可)で借りた軍用地である。北端の広大なハゴイ空軍基地を含むその北半分は軍事専用地、テニアン民間航空に近い南半分は民間に一時的に貸し出されて農耕地などとして利用されているリースバック地(LBA)で、島の南三分の一だけが非軍事用地だ。

 テニアンは長い間、とくに冷戦終結後、ハゴイ空軍基地に爆撃機や戦闘機が飛来してきたり、米軍が射撃訓練や上陸演習に使ったりする以外はほぼ放置されてきた。しかし今回の計画では、沖縄から移転する海兵隊の訓練施設がグアムだけでは足りないため、射撃演習場などの建設が構想されている。

 
 ★米軍計画に明示された普天間航空隊基地のグアム移転 

 
 グアムは、先述のとおり一犬軍事基地として、二〇世紀の大きな戦争で米軍の重要な出撃・補給拠点として利用されてきた。しかし冷戦終結後は、基地の縮小、訓練機能の縮小が相次ぎ、軍事基地の島というより、観光地としてのイメージが強くなった。米軍人の数も、わずか三〇〇〇人(二〇〇八年三月末現在)に減った。一九五〇年代に核弾頭とミサイルが持ち込まれ、ベトナム戦争時にB52を中心とする戦略爆撃機が絶え間なく離着陸していたアンダーセン空軍基地には、現在も爆撃機・戦闘機・偵察機などが訓練のため飛来し、かつては原子力潜水艦や原子力空母などがひんぱんに立ち寄っていたアプラ港は攻撃潜水艦などが補修や演習のために利用してはいるものの、以前とは比べられないほど利用度が減っている。
 ところが、今世紀に入って、このグアムが軍事基地として再び注目を浴びるようになった。

 きっかけは、二〇〇〇年の選挙で選出された◆ジョージ・W・ブッシュ大統領が導入したトランスフォメーション(二十一世紀に向けた軍事大変革)計画である。ブッシュ大統領の登場と二〇〇一年九月一一日に同政権と米国・世界を震憾させた同時多発テロ、そしてその直後に作成された「統合世界態勢・基地配置戦略(IGPBS)」と「四年ごとの国防政策レビュー(QDR)」イニシアチブを受けて、二〇〇二年十二月、日米両政府が日本とアジア太平洋における米軍再編の協議を開始。これにより、二〇〇五年一〇月二九日、「日米同盟一未来のための変革と再編(ATARA)」合意が生まれ、翌○六年五月一日、日本の小泉政権と米国のブッシュ政権の間で「再編実施のための日米ロードマップ」が合意された。
 この「ロードマップ」からわずか二か月後、米太平洋軍司令部は「グアム統合軍事開発計画」を発表した。そしてこの計画案は、二年後の○八年四月、国防総省の「グアム統合軍事マスタープラン素案」として承認され、翌○九年一一月にはマスタープラン(基本計画)を実現するための膨大な文書「環境影響評価案」(要約プラス九冊)が公表されたのである。

 こうして、グアムではいま、「ロードマップ」と「グアム統合軍事マスタープラン」を受けて、沖縄から移駐する海兵隊員およそ八千人、その家族九千人を受け入れるため、米国がアンダーセン空軍基地を整備し、空軍基地南西のフィネガヤンに司令部や住宅地域などを整備する事業を進めている。

 そこでこの海兵隊であるが、「ロードマップ」では、沖縄からグアムに移駐するのは海兵隊の司令部と支援部隊、および家族とされていた。
 ところが、米国防総省のグアム基地建設計画では、海兵隊普天間航空基地(普天間飛行場)の施設や訓練機能を、広大なアンダーセン空軍基地に移設する、また沖縄にある海兵隊の射撃演習場、都市型(対テロ)戦闘訓練場、ジャングル戦訓練場、そして沿岸強襲揚陸訓練場とそっくりの訓練施設を、島中東部の南アンダーセンやバリガダなどに設置する計画が含まれている。さらに、海兵隊がアプラ港沿岸の旧海兵隊飛行場を使用する、同沿岸に海兵隊用ヘリコプター着陸帯を建設する計画なども盛り込まれている。加えて、グアムの北に位置する米国自治領・北マリアナ諸島のテニアンの内陸部、沿岸、空域は、グアムに駐留する海兵隊の演習場となる。

 広大なアプラ港に位置する軍港には、既存の原子力潜水艦寄港埠頭に加えて、新たに原子力空母接岸埠頭を建設し、フィネガヤンには陸軍のミサイル防衛部隊も配備する予定だ。 

 
   続く。

 

●『戦争依存症国家アメリカと日本』-4
 
 ●『戦争依存症国家アメリカと日本』-4

 
 ★沖縄県民大会を伝えた外国メディア

 
 米国では在沖米軍基地に対する関心は低いが、その必要性に疑問を呈したり、閉鎖を要求する識者がいないわけではない。

 たとえばジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ准教授は、「(駐冲)海兵隊の抑止力」についての杉田弘毅・共同通信編集委員の問いに答えて、こう述べている。

 「朝鮮半島や中台間の有事を抑止する任務を、沖縄の海兵隊が持つとは思わない。沖  縄はこれらの地域に近いから海兵隊がいた方が良いとは思うが、どれほど必要かという質問は提起されるべきだ。紛争の性格も変わっており、海兵隊は装備を沖縄に常置し、有事の際に兵員が飛んでくる形でも任務を遂行できる。沖縄にいなければ、任務を遂行できないのか、と海兵隊に問うべきだ」(『沖縄タイムス』二〇一〇年八月一四日)

 また一〇年四月に来日したティモシー・J・キーティング前米太平洋軍司令官も、「沖縄は訓練の機会、(すでに投入して回収できない)埋没費用を考えると(駐留場所として)都合が良い」と指摘する一方で、「関東平野など他に受け入れ先があるのなら、どうしても沖縄でなければならないとは思わない。海兵隊が(どこかに)前方展開できるのであれば、太平洋軍として異存はない」、海兵隊の沖縄県内の駐留は「より好ましいが、絶対に必要というわけではない」と語っている(『朝日新聞』一〇年四月一五日電子版)。

 二〇一〇年四月二五日に沖縄の読谷村で聞かれた普天間基地の閉鎖・撤去を求める県民大会は、米国でも大きな反響を呼んだ。

 同日付けの『ニューヨーク・タイムズ』は、黄色いシャツを着て、あるいは黄色い帽子をかぶって握りこぶしを挙げ、沖縄からの基地撤去を要求する住民たちの写真とともに、「沖縄で九万人が米軍基地に抗議」と題する記事を載せた。

 米軍人の間で広く読まれている準米軍機関紙『星条旗』も、普天間基地の即時閉鎖とすべての部隊の県外移設を求めた県議会の超党派決議に支持を表明するため、仲井真知事や自民党議員を含む「何万もの人々が普天間計画に反対する集会」を開いたと、参加者の声を交えて報じた。

 ロイター、AP、AFP、共同〈英文〉など、世界のメディアに記事を配信している主要通信社も、県民大会の模様と参加者の声を伝えた。 

 
 ★北米の市民団体「沖縄ネットワーク」の活動 

 
 北米を拠点に活動する連帯組織 Network for Okinawa(NO)は、二〇一〇年四月二三日、五百を超える団体が署名した普天間基地の閉鎖を要求し、沖縄での新基地の建設に反対する手紙をオバマ大統領と鳩山首相に送ったほか、米国の首都ワシントンの日本大使館の前でデモ集会を開いて同じことを訴え、四月二八日の『ワシントン・ポスト』に全面広告を掲載した(前ページ写真 *略)。

 NOのインターネット・サイト“Close the Base”(基地を閉鎖せよ)によると、NOの構成団体は、平和学研究所(IPS)、生物多様性センター(CBD)、平和のための退役軍人の会(VFP)、グリーンピース、ピース・フィロソフィーセンター、真の安全保障を求める女性たち(WGS)、Usピース・ボート、ピース・アクション、アメリカ保守防衛同盟、アメリカン・フレンズ奉仕会(AFSC)、メソジスト教会、日本法律家連盟などである。

 NOは、二〇一〇年六月一四日、五月末の日米共同声明に「強く反対する」というステートメントも発表した。その中で次のように述べている。
「新基地の建設は民主主義の理念に反し、環境を脅かし、日本にとっても米国にとっても安全保障の向上とはならない」
 「沖縄の海兵隊の存在に戦略的価値はない。・・・沖縄の米海兵隊の多くは日本や沖縄  を守るのではなく、イラクやアフガニスタンで戦っているのだ。海兵隊の沖縄での訓練は、多くの日本人が信じ込まされているような『日本を守る』という建前とは全く関係ない目的で行われているのである」

 NOの窓口になっている政策研究所の代表ジョン・フェッファー氏は、二〇一〇年三月二三日に、「オバマ政権は、米軍基地について、耳は開けているものの、聴いてはいない」という記事で興味深いことを書いている。
「三月中旬に聞かれた普天間基地をめぐる議会の公聴会で、ローラバッチャー共和党  上院議員が国防総省の役人に在日米軍の兵力を尋ねたところ、『調べてあとで回答しま  す』と答えたという・・・。これに対し、ローラバッチャー議員は、われわれの能力とニーズについて明確な考えがなければ、沖縄に新基地を建設する合理性はない、と指摘した」

 もう一つ、公聴会でエニ・ファレオマバエガ民主党議員が、もし中国が脅威でなく、冷戦が二三年も前に終結しているとしたら、米国はなぜ大軍(約四万七〇〇〇人)を日本に駐留させる必要があるのか、またなぜ世界中に七百以上の基地を配備し、世界一の武器輸出国なのかを間うた。これに対しても、国防総省の担当者はまともに答えられなかった。

 こうした事例を挙げた上で、フェッファー氏は、「米国は、(ブッシュ)前政権と全く同じ防衛戦略を維持しようとしながら、一方で、多国間協調や『グローバル・パートナー』としての地位へのコミットメントを訴えている」として、これは「七歳児にも分かる矛盾」だと批判した。

 NOのサイトにはこんな声もある。
 二〇一〇年八月に沖縄を訪れた平和団体「ピース・アクション」のポール・マーティン氏は、「基地と住宅地が近くて驚いた。米国内ではあり得ない」と在沖米軍基地の危険性を指摘し、「帰国後、沖縄に対する政策を改めるよう米国の上下院議員に働きかけ、一般市民に沖縄の現状を伝えて米軍基地閉鎖につなげたい」と述べた。
 またテニス・J・クシニッチ連邦下院議員(民主党)は、二〇一〇年四月二五日、「日本国民への連帯メッセージ 在日米軍基地をめぐって」を発表した。同議員はその中で、「下院歳出委員会防衛小委員会の委員長に手紙を送り、普天間基地に駐留する米軍海兵隊の名護市への移転計画についての私の懸念を表明しました。海兵隊がその部隊を名護市へと移そうとするに際し、その議論には地元住民の視点がまったく存在していないからです」と述べ、その具体的な問題点として。
 「稲嶺(名護)市長の選出は、自分たちの環境と暮らしを守ろうとする地元の人々の勇敢な闘いにおける重要で象徴的な勝利でした。沖縄の人々の懸念が考慮されなければなりません。基地移転への彼らの強い反対、そして新たな軍事基地建設から生じるであろう環境上、経済上の損害を脇に押しやることはできません。その地の海洋生物に自然の生息地を提供してきた脆弱なサンゴ礁は、地元漁民の経済的基盤とともに脅かされています」
 と書いている。

 このように、米国にも、国会議員を含め、沖縄の米軍基地の存在や県内でのたらい回しに深い危惧を抱く人たちが少なくない。

 しかしそうした声は、日本の主要メディアからは伝わってこない。伝わってくるのは、日米同盟強化論、在沖海兵隊抑止力論の声ばかりである。

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 ●『戦争依存症国家アメリカと日本』 Ⅲ章   <了>。

 
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 未明に目覚めたので、話題の作品を一気に読んだ。内容は略。

 いかにも映画向きのストーリー展開だなあ・・という印象。

 カバー(ダブルカバーになっている)によっても、ずいぶん印象が違うものだ。


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